新・祖母が語った不思議な話:その陸拾参(63)「鈴」

明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」正続編終了時に、多くの方から続編を望まれる声をいただきました。御期待に応えた第3シリーズです。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

小学1年生の夏のある日、祖母と駄菓子屋に行った。
「好きなものを3つ買ってあげる」と言うので、怪獣王子のブーメランと科学特捜隊のバッジ、そしてロボタンのアイスキャンデーを選んだ。
支払いをする祖母のがまぐちに付いた小さな鈴がチリンと鳴った。

「おばあちゃん、そのすずなあに?」
「これはね、お守り。それに落としたりしたらチリンと鳴って教えてくれるからね」
「なるほどー」
「そうだ。帰ったら、ひとつお話をしてあげる」
「やった!」
祖母の手を引いてぐんぐん家まで走った。

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【祖母の話】

明治も終わろうとする七月。四国のある地方の街外れの川沿いに、その頃まだ珍しかった洋風の大きな家があった。
裕福な家だったが、千代という五つになる女の子は生まれつき体が弱く、一日の大半を布団の中で過ごしていた。
そんな彼女の慰めは、前の川の土手で拾った市松人形だった。

きれいに泥を落とし、母親からもらった端切で不器用ながらも心を込めて小さな赤い着物を縫い、帯には宝物にしていた豆鈴を結んでやった。
泥の中から見つけたので「蓮(れん)」という名前をつけ妹のように可愛がり、どこへ行くにも一緒だった。

それから二年ほど経ったある晩、近隣からの失火が千代の家に燃え移った。
激しい煙の中、千代は蓮をきつく胸に抱きしめ、必死に出口へと向かった。
しかし、あと一歩というところで煙に巻かれ、意識を失って倒れ込んでしまった。

煙の立ち込める中、父母が必死に娘の名を叫ぶ。
だが、夜の闇と黒煙に遮られ、千代がどこに倒れているのか皆目見当がつかない。
その時、パチパチと爆ぜる炎の音に混じって、「チリン! チリン!」と鈴の音が響いた。

あれは、千代が蓮の着物の帯に結びつけておいた豆鈴!
父親はその微かな音を聞き逃さなかった。
音のした方へ手を伸ばす。いた!
床に倒れていた千代の着物をつかむと、間一髪のところで燃え盛る家の中から外へと引きずり出した。
その直後、二人がいた場所へ凄まじい音を立てて梁が崩れ落ちた。

目を覚ました千代に父親が真っ黒に焦げた蓮を差し出した。

「蓮が知らせてくれたからお前を助けることができた。ただ蓮は…」
猛火に焼かれた蓮の体は真っ黒、手縫いした赤い着物もすっかり焼け焦げていた。

千代が受け取った瞬間、蓮は粉々に砕けた。
煤にまみれながらもまだかすかに金色に光る豆鈴を残して。

「蓮…ありがとう」
千代はその小さな鈴を手のひらで包み、泣きながら頭を下げた。

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「大人になってからお千代ちゃんと友達になってね。この話を聞かせてくれたんだよ」
「おにんぎょうがたすけてくれたんだね。すずはどうなったの?」
「一昨年会ったときにはちゃんと財布に付けていたよ。ちょっと焦げた豆鈴。『これのおかげでこの歳までなんとか生きてこられました』と笑っていたよ」
「へえ! お守りだね」
「それを聞いて、私も真似したの」

祖母は鈴をチリンと鳴らした。

チョコ太郎より

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