私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

「今年も終わるね…歳をとると一年があっという間だよ」
12月、二人で障子の張り替えをしているとき、祖母がそうつぶやいた。
古い障子を破りながら「昔も大掃除ってやったの?」と聞くと
「やったよ。年神様を迎えるためだからね。そうだ、私のおじいさんから聞いた話をしてあげよう」

……………………………………………………………
【祖母のおじいさんの話】
祖母のおじいさんが若い頃、町のはずれにたいそう貧しい竹細工師の夫婦が住んでいた。
二人とも気だての良い働き者だったがなぜかお金が貯まらない。
今年もあと三日となり、このままでは年が越せないと二人で話し合ったが良い考えも出ない。
とりあえず大掃除をやろうということになった。
狭い家なので掃除はすぐに終わり、ついでとばかりに辻のお地蔵さんや庚申塚、恵比須・大黒さんの祠(ほこら)も綺麗に磨いた。

その夜遅くに知らない老人が訪ねてきた。
「困っているようだから良い事を教えてやる。明晩この前を駕籠が通る。それをこれで打て。心配する事は無いから思い切り打て」
怒ったようにそれだけ言うと老人は出て行った。傍らには錫杖(しゃくじょう)が残されていた。
次の晩、半信半疑で待っていると足音が聞こえてきて、闇の中から立派な駕籠が現れた。
「これか!」と錫杖を構えたが、どうしても振り下ろせない。
駕籠は目の前を走り去って行ってしまった。

次の日の夕方、再びあの老人が姿を現した。
「お前打たなかったな。今夜、逆の方角から同じ駕籠がくるから今度こそ打て。打たないとお前の命が無いと思え」
恐ろしい顔でそう脅すと去っていった。
大晦日の夜、老人の言った通り逆の方から駕籠がやってきた。
覚悟を決めて目をつぶり、「南無三」と力を込めて打ち下ろした。
「ジャン!」
奇妙な音に目を開けると、そこには人の形に銀貨や瑠璃、珊瑚が散らばっていた。
音を聞いて家の中から出てきた妻と二人呆然としていると老人の声が聞こえた。
「担いだ方を打ったか…駕籠なら金だったんだがな。まぁこれで年が越せるだろう」

……………………………………………………………
「それからその夫婦はどんどん裕福になり、子どももたくさん産まれたそうだよ」
「おばあちゃん、これが終わったらお地蔵さんとか磨きに行こうよ!」
それを聞いた祖母は
「正月も来てないのに、あなたはめでたいね」と笑った。





チョコ太郎より
初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。また、「新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」「こんな話を知っている」といった声をぜひお聞かせください。一言でも大丈夫です!下記のフォームからどうぞ。
