私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

祖母が六歳の頃、朝早くから家族で山菜採りに出かけた。
ワラビがたくさん生えているのを見つけた祖母は、夢中で摘んでいるうちにどんどん山の奥に入っていった。

頭に落ちてきた雨にはっと我に帰り周囲を見渡すと来た事の無い場所だった。
雨はどんどんひどくなる。
どこかで雨宿りをと探していると、幸い小さな小屋があった。
中に入ると安心と疲れでウトウト眠ってしまった。
がさがさ…がさがさ
…?
外になにかがいる!
小屋の壁を擦りながらぐるぐる回っている!
異様な気配に目を覚ました祖母は、急いで戸に心張り棒をかけた。
戸の隙間からのぞいてみると真っ黒な顔をした大きな女がいる!

恐ろしくなった祖母は知っているかぎりのお経を唱えた。
「観自在菩薩…般若波羅蜜多…観自在菩薩…般若波羅蜜多…
かんじざいぼさつ…はんにゃはらみた!」
「おーん!」という長く響く泣き声を残し気配は消えた。
しばらくすると兄が迎えにきてくれ、一緒に家に帰った。
ずっとあの女が着いてきているんじゃないかとひやひやしながら。

その出来事を祖母は母親に話した。
「あぶなかったなぁ。破れ心経を唱えたから助かったのよ」
「破れ心経?」
「覚えているところだけ唱える般若心経のこと。それでも魔除けになるのよ」
よっぽど怖かったのだろう、それからすぐに祖母は般若心経を全部覚えたそうだ。





チョコ太郎より
初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。また、「新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」「こんな話を知っている」といった声をぜひお聞かせください。一言でも大丈夫です!下記のフォームからどうぞ。
