人気タレントの中上真亜子さんとともに、福岡・九州の“推しどころ”を巡る「ふるさと推し隊」。
今回訪れたのは、福岡県大刀洗町にある「ロォーリング 」。大きな暖簾をくぐると、藍染めの衣服や久留米絣の小物などがずらり。温かい笑顔とともに迎えてくれました。

自家栽培の藍で染め、土に還る服

ロォーリングは、久留米絣や久留米織の技術をいかし、藍の栽培から染め・デザイン・縫製まで一貫して手がけるアパレル工房。
「藍を育てて、糸を染めて、織って、服にして…最後に、この服はまた土に還すことができます」。そう語ってくれたのは、代表の實藤俊彦さん。
ロォーリングの服は、天然素材を使い、蛍光剤や樹脂加工を施さずにつくられているため、土に戻すとすべて残らず分解されるのだそうです。

ロォーリングがある三川地区は、久留米絣が誕生する以前から藍の名産地。筑後川沿いの湿地帯は藍がよく育つ土地柄で、織物文化を長年支えてきました。
實藤さんは、ここで原種に近い藍を農薬を使わずに育て続けています。乾燥させた藍の葉を手に取り、「藍の緑色の生葉をちぎるとね、断面が空気に触れてブルーに変わる。見学に来た子どもたちがいつも驚きます」と教えてくれました。

藍が糸になり、布になり、服となって、最後は土へ還る。その土からまた、新しい藍が芽吹く。
この自然の循環こそ、社名「ロォーリング」の由来です。
久留米絣の技術を進化させた「からくり織」

久留米絣は綿素材の織物で、糸そのものに柄を仕込んで織ります。使うほどに体になじむ丈夫な“暮らしの布”として、長く愛されています。その技術をもとに生まれたのがロォーリング独自の「からくり織」です。

「からくり織」では極細の糸を4〜5本ひねり合わせて一本の糸にし、空気をふくませながら織る特殊な手法を採用。これによって、霜降りのような奥行きのある表情と、ふんわりと軽く暖かい肌ざわりが生まれます。
中上さんもからくり織の生地に触れ、「ほんとだ。軽いし柔らかい」と驚き。

「中に空気が入っとるから、ふわっとあったかいんです」と實藤さん。
色も形も“変化する”アイテム

店内には、からくり織を使った独創的なアイテムが並びます。

三葉仕立ての立体感とドレープが特徴の「ルターセ」ポンチョは、3色のからくり織りでつくられた生地は表と裏でトーンが違い、使い方次第で表情が変わります。結んだり、羽織ったり、掛けたりと楽しめる一着です。

5色濃淡のからくり織を筒状にした「ルチューブ」マフラーは、ひねるだけで色面が変わり、こちらもリバーシブルで使えるアイテム。「色が変わっておもしろい!」と中上さん。このほかにも、ユニークでおしゃれなアイテムがそろっています。
2階の工房を特別見学

2階の工房も案内してもらいました。大小さまざまなミシンや機械が所狭しと並んでいます。
「うちでは、大量には作らない。その分、お客さんに合わせて丈を1cm短くしたり、袖幅を微調整したり、ほぼオーダーみたいな作り方ができるんです」

手間暇かけて作られているからこそ、店内に並ぶ服はどれも一点一点が微妙に表情の違う“特別な一枚”になっています。
愛がたっぷり、ロォーリングのものづくり

「大事なのは、20年着てもらうこと。それが一番エコやろ?」と實藤さんは語ります。
必要以上に作らず、長く愛せる服を届ける姿勢は、久留米絣のものづくりの精神にもつながります。
全国から「今年の新作は?」とファンが訪れるのも納得。丁寧に染め、丁寧に縫い、丁寧に仕立てる—。自然と人に寄り添うその誠実さこそロォーリングの魅力です。

工房の裏には、農薬を使わずに育てる“三川藍”の畑が広がり、近くにはホタルの生息地や筑後川も流れています。
その大刀洗らしい穏やかな景色の中で、藍を育て、服を仕立て、いずれ土へと還っていく。そんな優しい循環を、実感できた時間となりました。
ロォーリング ファクトリーショップ

住所:福岡県三井郡大刀洗町三川550-3
営業:8:00~18:00(年末年始・お盆は店休日)
URL:https://www.kasuri.jp/





