2026年、博多座(福岡市博多区)の二月花形歌舞伎は「あらしのよるに」。同7日(土)~22日(金)に上演されます。博多座では2018年11月の公演以来とあって期待が高まります。原作はシリーズ累計約380万部の大ベストセラー絵本。先日、福岡に訪れた原作者のきむらゆういちさんに、歌舞伎版への思いや見どころなどを聞きました。
30年の時を経てなお世界中で愛される物語

絵本「あらしのよるに」は1994年の刊行以来、長く愛されているシリーズ。本来なら“食う側”のオオカミと“食われる側”のヤギという種族の違いを超えた友情物語に、子どもから大人まで多くの人が共感を覚えました。
「絵本作家として約1,000タイトルを出版してきましたが、あらしのよるにシリーズは非常に長く愛されてきました。作者にとってありがたいこと以外にないですね」ときむらさんは話します。

2003年にはテレビアニメ放送、05年には映画化もされた大ヒット作。数多くのメディアで広がりを見せ、長く支持されている理由を自身で「普遍性があるから」と捉えています。物語は、「もし相手の姿が見えなかったら、ヤギとオオカミの間にも友情が生まれるのだろうか?」という発想から生まれました。
中村獅童さんが熱演する歌舞伎版に驚き、感動

中村獅童さんのアイデアで歌舞伎化された舞台を見て「それまで歌舞伎のことをよく知らなかったのですが、大変驚きました。伝統的な演出を取り入れながら、現代の絵本を溶け込ませていて。歌舞伎と絵本の世界を同時に楽しめる作品に仕上がっていました」と当時の感動を話します。
またオオカミのがぶ役の獅童さんに対して、「獅童さんの熱演が本当に素晴らしく、“あらしのよるに愛”が炸裂しています。他の人が演じるのは想像がつかない。獅童さんなくして歌舞伎版は考えられません」ときむらさん。

今回の再演では、ヤギのめい役に中村壱太郎さんが挑みます。「(前回博多座公演でめい役の)尾上松也さんはかっこよく、壱太郎さんは女形として活躍しているのもあり、とてもかわいい。愛されキャラのめいに仕上がっています」という感想。獅童さんのご子息の陽喜(はるき)くんが幼い頃のめい役、夏幹(なつき)くんが幼い頃のがぶ役を勤めるのにも注目しているとか。「昨年の歌舞伎座公演にも陽喜くんと夏幹くんは(同役で)登場しましたが、さらに歳を重ねて、博多座でどんな演技を見せてくれるか非常に楽しみです」と期待を寄せます。

本公演は獅童さんの思いもあり、3歳以上の入場が可能。「イヤホン解説がなくても分かりやすい演目。絵本を知っている子どもさんは、ますます分かるのでは。絵本とはまた違った不思議な魅力があるので、ぜひ子どもさんと一緒に楽しんでほしい」ときむらさんは呼びかけます。
映画「国宝」の大ヒットもあり歌舞伎ブームが巻き起こる中、子どもも大人も楽しめる新作歌舞伎の再演に期待が高まります。人間にとって大切なものは何かを教えてくれるハートフルな本作。大切な人と足を運んでください。

【あらすじ】
感動を呼ぶオオカミとヤギの友情物語
激しい嵐の夜に、小屋に身を寄せているのは、オオカミのがぶとヤギのめい。暗闇で互いの姿は見えず、相手が誰だか分からないのに話が弾み、すっかり意気投合。「あらしのよるに」を合言葉に翌日の再会を約束して別れます。翌日、明るい空の下、がぶとめいは合言葉をうれしそうに交わしますが、互いに相手の姿を見てびっくり。目の前にいるのはオオカミにとって大好物のヤギと、ヤギの天敵のオオカミ。食べたい欲求を抑えるがぶと、食べられてしまうのではと不安を抱くめいでしたが、話をするうちにますます親しみを覚え、互いを“友達”と呼び合うほどに仲が深まります。やがてある月夜の晩、がぶとめいが並んで美しい月を眺めていると…。
二月花形歌舞伎「あらしのよるに」
日時:2026年2月7日(土)~20日(金) 11:00/16:00
※16:00の上演スケジュールは下記サイトで確認を
※12日(木)休演
場所:博多座(福岡市博多区下川端町2-1)
料金:A席15,500円、特B席12,500円、B席9,000円、C席5,500円 ※税込み
※17日(火)と19日(木)の夜の部は割引料金
※3歳以上入場可。1人につき1枚のチケットが必要
問い合わせ:博多座電話予約センター(10:00~17:00)
電話:092-263-5555
公式サイト https://www.hakataza.co.jp/lineup/123
きむらゆういち公式インスタグラム @kimurayuichi_official





