新・祖母が語った不思議な話:その参拾伍(35)「メール」

明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」正続編終了時に、多くの方から続編を望まれる声をいただきました。御期待に応えた第3シリーズです。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

チョコ太郎 様

お久しぶりです。
お変わりないかな?
この前話した踏切の話、WEBで読んだよ。
面白かった!
あんな風にイラストや写真が入り物語になると、一層不気味な感じになるね。
なんだか自分が話したものとは思えないよ。

実はあれからもう一つ話を聞いたからメールしたんだ。
話の出どころはウチの娘。

この前久々に高校の同窓会があるからと孫を連れて里帰りしてね。
その時に「踏切の話」を教えたら、スマホで読んでいたよ。
「これ、俺が話したんだよ」と言うと、ちょっと感心してた。
ま、そりゃいいか。

当日娘は朝から美容室に行き、ちょいとお洒落して同窓会に出かけたよ。
生憎の大雨だったのが気の毒だったな。

「十数年ぶりの同窓会か…楽しくやってるかな…そろそろ二次会かな? 俺もちょっとビールでも飲むか」
そう思っていたとき、スヤスヤだった孫が火がついたように泣き出した。
そしてスマホが鳴った。
娘だった。
「父さん、晩酌してた?」
「いや、まだ…というか、なんで?」
「あぁ、良かった! 黒崎駅前まで迎えに来てくれないかな」
なんだかよく分からなかったけど、妙に切羽詰まった感じだったので孫を嫁さんに預けて車を出したよ。

「山口さんって覚えてる?」家に着くなり娘が言う。
「山口…山口…」
「ほら、明子ちゃん! アキちゃんって呼んでた」
「あぁ、一丁目のアキちゃんか! いつも自転車で遊びに来ていた」
「そうそう。今日の同窓会で隣りに座ったから懐かし話をしてたら、今の今まで忘れていたことを思い出したんだ」
「どんな?」
「うん。アキちゃんのお兄さん、中学のときに車の事故で亡くなったの覚えてる?」
「ああ一緒に通夜に行ったなぁ。今日みたいな酷い雨の日だったような」
「そうそう、土砂降り。私はアキちゃんと二人でお線香を絶やさないように座敷に設えられた祭壇の番をしていたのね。そしたら台所から呼ばれてアキちゃんが出て行ったんだ。それを見届け目を戻すと、学生服姿の男の子が祭壇の前に座っているの。声をかけようとしたらすぅっと出て行ったんだけど、その顔がお兄さんの遺影とそっくり。私は腰が抜けて…四つん這いで台所まで行こうとしたところでお父さんに助けられたんだよね」

「ああ、あったなそんなこと。家に帰ってからその話を聞いたね」
「そうそう。そしたらお父さんから『あそこのお兄さんは双子だよ』って教えてくれたよね」
「うん」
「今日ね、アキちゃんに『本当の幽霊かと思っちゃった』ってその話をしたら、『それ本物』って言うの」
「えっ?」

「『兄さんたちは同じタクシーに乗っていて事故に遭ったの。健一兄さんは亡くなり、健二兄さんは重傷で入院。だから通夜になんて来られるはずなんてない』って。そして『5年前にも近所の人たちが見た、見たって騒ぎになった』とも言ったわ」
「それこそ健二くんの見間違いでは?」
「私もそう言ったんだけどアキちゃんの答えはNO。『健二兄さんは県外の大学に入ってからあまり帰って来なかったし、騒ぎになった日は電車が止まるくらいの大雨だったから絶対帰らない。それに…皆が見たというのは詰め襟姿の中学生だから』って」
「…そうか」

「一次会も〆というときに彼女がポツンと『今でも雨の夜には兄さんが戻って来るような気がするんだよね』と言うのよ。外は大雨…すごく怖くなって二次会に行こうなんて気分じゃなくなってね…それでお父さんに来てもらったんだ」

話はこれだけ。
落ちもなくとりとめのない文章になったけど、プロじゃないので、ご勘弁。
娘には許可を取ってるから、この話も連載に加えてもらえると嬉しいな。
不思議な(怖い?)話聞いたらまた連絡するよ。
それじゃあ。

追伸
この前話した矢牧君の手術は無事成功でした。

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今回は以前「ふみきり」の話を聞かせてくれた友人・古芝君からのメールが非常に興味深かったので、誤字・脱字や分かりづらい箇所を修正、個人名を変更した以外、内容はほぼそのまま紹介した。
宛名には筆者の実名が書かれていたが、「チョコ太郎」とした。

チョコ太郎より

お読みいただき、ありがとうございます。イラストに関する感想もいただき、大変嬉しく思っています。
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※新・祖母が語った不思議な話:その弐拾玖(29)「きのせい」の中で四十がらみの女性を「年配」と表現しておりますが、なにぶん今よりずっと寿命の短かった時代のお話ですのでご了承ください。

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