「将来は検察官になりたい!」小学4年生の息子が突然の夢を宣言。張り切った私は六法全書を借り、家庭内で疑似裁判まで開催することに。ところが数日後、意外な展開が待っていました。
検察官になりたい息子

「将来の夢は何?」と聞いたとき、子どもがどんな答えをするのかは親にとっても楽しみのひとつです。スポーツ選手、ユーチューバー、博士…。そのときの流行や、見たテレビ番組、友だちの影響でコロコロ変わるのも、小学生らしいかわいさだと思います。
そんなある日、小学4年生の息子が意外な言葉を口にしました。
「ぼく、将来は検察官になりたい!」
最近では好きなテレビ番組も変わり、少しずつ大人向けの番組も見るようになった息子。どこで知ったんだろう?と思いつつ、「そうなの?」と聞き返すと、息子は真剣な顔でうなずきました。検察官なんて、小学生の将来の夢ランキングには登場しない職業です。
親の方が盛り上がる
「検察官って、悪いことをした人を裁判にかけるんだよね。かっこいい!」息子が目を輝かせるのを見て、私もつい盛り上がってしまいました。
「検察官って何をするんだろう?」親である私自身、ドラマでしか見たことのない職業です。さっそく図書館で「検察官になるには」「検察のしごと」といった本を借りてきたり、時には分厚い「六法全書」を抱えて帰宅したり。もちろん内容は小学生には難しすぎるのですが、検察官になるにはどうしたらいいか、息子と一緒に考えてみたくなったのです。
疑似裁判の開廷

調子に乗った私と息子は、さらに家族で「疑似裁判」をしてみることに。息子は検察官役、私は弁護士役、小学1年生の弟は裁判官役。ぬいぐるみを被告に見立てて「有罪か無罪か」を議論してみました。
「くまさん、あなたは犬さんにケガをさせましたね?」
「故意ではありません!事故です!」
などと言いながら、息子も楽しそうに「異議あり!」と叫んでいました。
しかし、日が経つにつれて息子の反応が鈍くなり、図書館で借りた本もぱらぱらとめくっただけで机に積まれたまま。
「裁判ごっこやる?」と聞いても「今はいいや」と興味の無さそうな返事が返ってきます。
数日後、夕飯を食べながら息子があっさり言いました。
「やっぱり検察官はやめた。歴史を研究する博士の方がいい。」
あまりに軽やかな撤回に、思わず箸を止めました。あれほど本を借りて、一緒に裁判ごっこまでしたのに!?
振り返れば、私の方が「せっかく珍しい夢を見つけたんだから応援しなきゃ!」と前のめりになっていたのだと思います。子どもにとっては、ちょっと気になった職業を口にしただけなのに、親が大げさに構えすぎて「そんなに重たいことじゃなかったのに」と冷めてしまったのかもしれません。
子どもの夢は子どものもの

子どもが夢を語ったときは応援したい気持ちが大きいです。仮に「ノーベル賞を取る!」とか「宇宙飛行士になる!」など、ちょっと難しいかも?と感じる夢であったとしても「面白そうだね」「ちょっと調べてみようか」と寄り添いたいと思っています。だけど親が前のめりになり過ぎると、勝手にがっかりする事態にもなりかねません。
子どもの夢は子ども自身のものです。それに対して、親の私がああでもない、こうでもないと口をだすことは、かえってその夢に余計なものを足してしまうのかもしれないことに気がつきました。
今思うと「夢を語り、共有する時間」はとても楽しかったです。夢は変わっても、その時間が残る。そう考えると、息子が「検察官」を目指した数日間は、私たち家族にとって貴重なひとときだったと思います。
これからも、息子は突拍子もない夢を語ってくれるでしょう。そのたびに、私は少し肩の力を抜いて、「いいね、やってみよう」と笑顔で返したいと思います。
(ファンファン福岡公式ライター/本田 すのう)



