「大きすぎる夢」「低すぎる目標」…子どもの進路や目標、どこまで口出ししていい?【スポーツドクター・辻秀一先生が解説】

ファンファン福岡に集まった福岡の子育て世代の悩みに答える「声かけで変わる!親子で育むごきげん力」。スポーツ界や教育現場でメンタルサポートを行うスポーツドクター・辻秀一先生が、親子のごきげん力を育むためのヒントをお届けします。

今回のテーマは「進路や目標」。
子どもが掲げる夢や選択に「高すぎるのでは」「もっと挑戦してもいいのに」と戸惑ってしまうことも。そんな時、親としてどう声をかければいいのでしょうか。

目次

「非現実的では?」と親が感じてしまう子どもの目標

Q:子どもが「日本一の強豪校に行きたい」と言ったり、逆に「もっと挑戦してもいいのでは?」と思うような低い目標を掲げたり…。親から見ると現実的ではない目標だと感じることが多く、軌道修正した方がいいのか悩みます。どう声をかければよいでしょうか?

辻先生 子どもの目標は、知識や経験が少ないからこそ“感情”から出てくるものなんです。大人のように認知的に練られた意思ではありません。

だから「なんでそんな目標を?」と問い詰めると、“目標を立てるな”と否定されたように感じてしまいます。
大事なのは「どうしてそう思ったの?」「どんな気持ちでその目標を立てたの?」と、背景にある感情を理解してあげることです。

たとえ理由が「友達がその学校に行くから」でもいいと思います。
親にとってはしょうもなく聞こえても、そこにある子どもの気持ちを分かってあげることが大事なんです。感情を受け止めてもらえると、子どもは心理的に安心し、自分で考えを深められるようになります。

その上で「お父さん(お母さん)はこう思うけど、決めるのはあなた」と伝えましょう。
プロセスを大切にして、最終的には本人に決断させることが大切です。めんどくさいですけどね(笑)。

でも、これが子どもの主体性を育てるんです。

高校受験や大学受験の時期になると、意思がかなり形づくられてきます。そういう時期には、親が介入しすぎず、子どもの意思を尊重してあげることが大切です。自由度と余白を与えることで、主体的に生きる力が育ちます。

そして最後は「信じて見守ること」です。社会に出たとたん、試験範囲も答えもない現実が待っています。ここでは、「自分で考えて行動し、自分で心を整える力」が求められます。

子どものころに自由度と余白を持たせることができないと自分で物事を決められず、親や大人の言うことに従うだけのモードになってしまう。そうすると主体性のある子どもには育ちにくいんです。

期待は枠を押し付ける、応援は自由を広げる

写真AC

ー親としては「もっとやれる」との言葉がでることも。応援しているつもりが、つい期待してしまいます。

辻先生 人間はつい「期待」しますよね。でも“期待”というのは、自分の枠組みを子どもに当てはめること。そこには見返りが生まれるので、どうしても苦しくなる。

「期待しちゃいけない」というより、「期待という思考は良質な関係を生まない」ということを親自身が理解することが大切なんです。僕自身も昔はすごく期待していました。でもトレーニングを重ねて“ご機嫌の価値を高める”ことで、期待は互恵にならないと分かった。

だから今は、子どもにも、妻にも、アスリートたちにも「期待しているぞ」ではなく「応援しているよ」としか声をかけません。

応援には見返りがない。「信じているよ」「応援しているよ」と伝えることが、子どもの自由度や余白を広げ、主体性を育てるんです。

試合に出られないけれど、スポーツを続けたい子どもに対しては?

写真AC

Q:子どもがスポーツの強豪チームに所属しているものの、試合に出られない日々が続いています。親としては「もうやめてもいいのでは」と思うこともあり、ついネガティブな声をかけてしまいます。でも子どもは続けたいと言っています。どう関わるべきでしょうか?

辻先生 「出られないならやめたら?」というのは、親の尺度を押し付けているだけ。子どもにとっては“友達と一緒にいたい”とか“好きだからやっている”という理由でスポーツを続けているのかもしれませんよ。

だからこそ、まずはその気持ちを理解してあげること。「続けたいんだね」「好きなんだね」と受け止めればいい。子どもは感情の生き物です。意思や行動の前に、必ず感情がある。そこに寄り添ってあげることが一番の支えになります。

もちろん必要に応じてアドバイスはしますよ。でもそのベースは「応援モード」。
期待モードで指示ばかりするから、子どもは話したくなくなる。応援モードで理解を示し、その上で必要なときだけ助言する。それが子どもにとって一番力になるんです。

声かけのヒント

  • 「どんな気持ちでその目標を立てたの?」
  • 「いつも応援しているよ」

辻 秀一(つじ しゅういち)

スポーツドクター、メンタルコーチ、産業医。株式会社エミネクロス代表取締役。1961年東京都生まれ。北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学スポーツ医学研究センターでスポーツ医学を学ぶ。1999年、QOL向上を目的に株式会社エミネクロスを設立。

独自の「辻メソッド」による非認知スキルのメンタルトレーニングを展開し、オリンピアンやプロアスリート、企業、教育現場まで幅広く支援。Dialogue Sports研究所代表理事も務める。

著書に『個性を輝かせる子育て、つぶす子育て』(フォレスト出版)、『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)『自己肯定感ハラスメント』(フォレスト出版)など多数。

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