ファンファン福岡に集まった福岡の子育て世代の悩みに答える「声かけで変わる!親子で育むごきげん力」。スポーツ界や教育現場でメンタルサポートを行うスポーツドクター・辻秀一先生が、親子のごきげん力を育むためのヒントをお届けします。
今回のテーマは、スポーツや勉強で努力してきた子どもが本番で結果を出せなかったり、力を出せずに落ち込んだりしたときの声かけです。「励ましたいけれど、何を言えばいいのかわからない」「下手に声をかけて傷つけたくない」と悩む親御さんに向けたアドバイスです。
子どもには「期待」ではなく「応援」
Q:スポーツに打ち込んでいる子どもが、試合に出られなかったり、思うようなプレーができなかったりして、悔しさや自信を失っている様子を見ると、親としてとても心が揺れます。何か力になりたいと思いますが、下手に声をかけて傷つけたくもないし、かといって黙って見守るだけでいいのかもわからず、毎回悩んでしまいます。親としてどのような距離感や声かけが望ましいのでしょうか。
辻先生 親としても胸が痛い場面ですよね。練習を一生懸命頑張っている姿を知っているからこそ、力になりたいと思う。けれど、どんな言葉がいいのか難しい。
まず大事なのは、悔しい気持ちを200%理解してあげることです。「悔しいね」「つらかったね」と受け止めてあげる。それだけで子どもは「わかってもらえた」と感じます。
そして覚えていてほしいのは、子どもを伸ばすのは“期待”ではなく“応援”。
期待には結果を求める枠組みがあり、親が主役になってしまう。
でも応援は見返りを求めません。
結果に関係なく「どんなことがあっても応援しているよ」という声をかけ続けることが大切です。
「結果によってあなたの価値は決まらない」と伝えることが大切なんです。
だから声かけはシンプルでいいんです。
「一生懸命やってきたのは知ってるよ」「応援してるよ」。
これが、子どもにとって最強の言葉です。
また、「自信を持ってやりなさい」はNG。自信は結果の積み重ねの先に生まれるものです。挑戦の前に自信を持てる人はいません。だから「自分を信じてやってごらん」と伝えることが、子どもを支えます。
そして「結果が価値じゃない、頑張ること自体に意味がある」という姿勢を示してあげることが、子どもに大きな力を与えます。
緊張しがちな子には「今ここに集中すればいいよ」と声をかけてあげるのもいいでしょう。未来や結果を気にせず、いま頑張る自分を認めてあげることが、次の挑戦につながります。
傷ついてもあなたの価値は変わらない

ーやはり、子どもが失敗したり、何か傷ついたりする姿を見ると、親として動揺していします。
辻先生 親はどうしても動揺しますよね。それは、「何もしてあげられない」と考えてしまうからです。
でも大切なのは「傷つかないようにレールを敷く」ことではありません。むしろ人生は思い通りにならないことだらけ。傷つくこと自体は自然なことなんです。
試合に出られなくて悔しい、受験に失敗して悲しい—それは生きていれば誰もが経験すること。
親の役目は「傷つけないように守る」のではなく、「傷ついてもあなたの価値は下がらない」と伝えることです。
たとえば恋愛だって同じ。思い通りにならなくて傷つく。でもそれでいいんです。大切なのは傷つかないことではなく、“傷ついたときに価値が落ちないんだと思える環境”をつくることなんです。
心配性の親御さんも多いですが、こう考えてみてください。
「自分の子どもなんだから、そんなに大したことはない」と(笑)。
みんな大谷翔平選手や藤井聡太棋士にしようとするから苦しくなる。そうではなく、自分の子どもが持っているものが最高に開花できるように、無条件で信じてあげること。それが一番大切なんです。
声かけのヒント
- 「悔しかったね。でも最後まで一生懸命やってたの、見てたよ」
- 「傷ついても、あなたの価値は下がらないよ」

辻 秀一(つじ しゅういち)
スポーツドクター、メンタルコーチ、産業医。株式会社エミネクロス代表取締役。1961年東京都生まれ。北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学スポーツ医学研究センターでスポーツ医学を学ぶ。1999年、QOL向上を目的に株式会社エミネクロスを設立。
独自の「辻メソッド」による非認知スキルのメンタルトレーニングを展開し、オリンピアンやプロアスリート、企業、教育現場まで幅広く支援。Dialogue Sports研究所代表理事も務める。
著書に『個性を輝かせる子育て、つぶす子育て』(フォレスト出版)、『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)『自己肯定感ハラスメント』(フォレスト出版)など多数。






