ファンファン福岡の連載「声かけで変わる!親子で育むごきげん力」。スポーツ界や教育現場でメンタルサポートを行うスポーツドクター・辻秀一先生が、親子のごきげん力を育むためのヒントをお届けします。
今回のテーマは、多くの親が直面する「やめたい」という子どもの言葉。
親としては「せっかく続けてきたのに」「自分のためにも頑張ってほしい」と思ってしまい、悩む瞬間です。
今回は、そんな「やめたい」という子どもの声にどう向き合うか、辻先生に伺いました。
「やめたい」は意思ではなく感情
Q:子どもが「サッカーをやめたい」と言い出しました。親としては子どもの気持ちを尊重したいと思いながらも、続けた方が良いのではという気持ちもあり、どう答えればいいのか悩んでいます。
辻先生 悩みますよね。“やめたい”ってネガティブワードです。
大人は「やめる=諦める・逃げる」というイメージがあるから、自分の子どもがそう言うと、親としては嫌なんです。なぜなら多くの場合、親が「あなたのために」と思ってやらせているから。
でも基本的に子どもの意思はまだ未熟です。
だから子どもが「やめたい」と言っても、それは意思ではなく「感情」なんです。
大人も「今日は仕事に行きたくない」と感じることがありますよね。でも実際には行く。
大人はこうやって、意思と感情を分けられるけれど、子どもはまだ未熟なので「やめたい」は感情にすぎないことが多いんです。
「やめたい」という感情は自由

ー親は子供の「やめたい」をどう受け止めればいいのでしょうか?
辻先生 大事なのは「やめたいと感じているんだね」と受け止めてあげることこです。
「なんでやめたいの?」と理由を問い詰めて、子どもの感情の自由を奪ってはいけません。
「やめたい」と感じることは自由なんですから。大人だって、やめてはいけない場面で「やめたい」とは心の中で感じていますよね。
まずは「やめたいと今感じているんだね」という受け止めから始まり、不安なのか、イライラしてるのか、悲しいのか、辛いのか、といった感情を紐解いていってあげましょう。すると、「やめたい」というのは必ずしも結論ではないことが見えてきます。
もちろん、これはすぐに答えてくれるとは限りませんから、何日かかってもいい。声のかけ方も、「やめたい気持ちは分かるよ」と言ってあげてもいいし、「どんな感情があるの?」と聞いてみてもいいと思います。
感情を十分に受け止めてあげれば、それだけで子どもは「分かってもらえた」と思って、やめないかもしれません。
そして子どもの感情を十分に受け止めて、フロー(ごきげん)な状態になってから、「やめなくてもいいんだったら、続けてみたら?」と伝えればよいと思います。
もし、感情を理解したうえで、やっぱり子どもが「やめる」と決めるなら、それは本人の意思だら、親としては応援してあげましょう。
声かけのヒント
- 「やめたいと感じているんだね」
- 「どんな気持ちなの?感情は自由だから言っていいんだよ」

辻 秀一(つじ しゅういち)
スポーツドクター、メンタルコーチ、産業医。株式会社エミネクロス代表取締役。1961年東京都生まれ。北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学スポーツ医学研究センターでスポーツ医学を学ぶ。1999年、QOL向上を目的に株式会社エミネクロスを設立。
独自の「辻メソッド」による非認知スキルのメンタルトレーニングを展開し、オリンピアンやプロアスリート、企業、教育現場まで幅広く支援。Dialogue Sports研究所代表理事も務める。
著書に『個性を輝かせる子育て、つぶす子育て』(フォレスト出版)、『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)『自己肯定感ハラスメント』(フォレスト出版)など多数。




