明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」正続編終了時に、多くの方から続編を望まれる声をいただきました。御期待に応えた第3シリーズです。


先日、ヨウコ叔母さんから久しぶりに電話があった。
「連載面白いわね。全話読んじゃった。それで一つ不思議な出来事を思い出したから教えてあげようと思って電話したの」
「ありがとう! ぜひ聞かせて」
「じゃあ教えてしんぜよう」
得意そうにそう言うと話しはじめた。

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【ヨウコ叔母さんの話】
あれは小学…四年生の土曜日だったかな。
午前中で学校を終えたいつもの帰り道、友達と別れ家が見えたとき向こうから救急車が走って来たの。
スピードは出てたけどサイレンを鳴らしてないのが不思議だった。
通り過ぎたのを振り返って見ると、リアウインド? 後ろの窓から中年の女がこっちを見ている。
もちろん知らない人だったのに、その目を見た瞬間からあの救急車にどうしてもついて行かないといけない気がして居ても立ってもいられない。
「このあたりで救急車が行くのはB病院しかない」そう思った次の瞬間には走り出していた。

病院まで30分ほど走った。
9月とはいえまだ暑かったけど、なぜか全然汗をかかなかったなぁ。
思った通り病院にはさっき見た救急車が停まっていた。
その横に緊急と書かれた入口があったので中に入ったよ。
廊下を進んでいくけど誰にも会わない。
どこへかは分からないけど「早く行かなければ」という気持ちは強まる一方。
何かに導かれるように、誰にも遭わないまま手術室前の廊下まで来た。

ランプは手術中。
それをぼうっと見ていると後から聞き慣れた声がしたの。
「どうしてここに? 誰かから聞いたのか?」
父さんだった。
「え? 何のこと? お父さんこそどうしてここに?」
「さっき母さんが倒れてな。どうやら頭の中で出血したらしい。今、手術中だがどうなるか…」
父さんがそう言ったとき看護婦さんがやって来て、まだまだ時間がかかることを告げ家族の待機室に案内されたわ。
姉ちゃんたちにも連絡が取れない…そりゃそうよね。今みたいにみんながスマホとか持ってないんだもん。
それから4時間くらいして手術が終わった。
手術は上手くいったけど、結局母さんは長生きはできなかった…のは知ってるよね。

それから十数年、私は結婚し下曽根で暮らし始めた…のも知ってるか。
その年の終わり、夫が子どものころのアルバムを開いていたの。
側で見るともなしに見ていたんだけど、ある1枚を目にした瞬間「あっ!」と声が出た。
「こ、この人は?」
「うん? 僕の隣にいる女の人かい? …誰だろう? 知らないなあ。まあたまたま写っただけだと思うよ」
たまたまじゃない! 絶対に何か因縁がある!
私は確信したわ。
だってね、その顔はあの救急車の後部窓から覗いた女性とそっくりだったんだもん。

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「こんな感じ。どう?」
「うん、とても不思議で面白かったよ。ありがとう! 連載の一話として書いてもいい?」
「もちろん! あ、イラストも描くんだよね?」
「うん、描くよ」
「じゃあさ、小学生の私を描くなら絶対美少女に描いてね」
「あはは了解! ヨウコ叔母さん、昔から変わらないね」
「そう? じゃ、またね」
というわけで、今回のお話が出来上がった次第。




チョコ太郎より
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