8月も末になり、子どもたちの夏休みも終わろうとしているが、まだまだ暑い日が続く。こんな暑い日は、あえて激辛なものでも食べて、サウナばりに汗を流して整えよう、とランチは激辛で有名な担々麺屋に向かっていた。
しかしときどき伺う、ランチ営業もやっている小料理屋さんの軒先に張り出してあった「さんま入荷しました」の文字に足が止まった。

今泉の路地、昭和の面影を残す雑居ビルにある「樹扇(きせん)」
朝から、完全に担々麺の口になっていた。
が、さんまが入荷されている。秋刀魚だ。秋の刀の魚だ。まだまだ暑いけど、秋の訪れを感じさせるトピックスである。無理やり気分を秋に飛ばしたい。相変わらず季節に敏感にいたい。
吸い寄せられるように、店内へと入った。

樹扇さんは、中央区今泉の裏通り、再開発が進む界隈において一画だけ抗うような、趣ある雑居ビルの一階にある。このビルは、新天神ビルという建物で、本当に激渋なので、福岡遺産として保護してほしいと思う。

夜は、小料理屋というか、カラオケも歌えるからスナックにも近いのだろうけど、カウンター数席でお酒と料理を提供されている。昔、高齢の先輩に誘われて夜いったことがあり、酩酊した先輩の説教とカラオケを散々聞かされ、最後足元もおぼつかなかったのでタクシーを止めて無理やり乗せて、その方は姪浜に住んでいたのだが、「海の中道まで」と運転手に伝えた、などの思い出がある。若かった。
ランチタイムは定食を提供されていて、900円で各種定食が楽しめる。いわゆる「家庭料理」。手作りの優しい味、素朴で、安心できる定食を求め、近隣のビジネスマンを中心にいつも賑わっている。
私は多分この店の全メニューを食べたことがあるが、周りのオーダーを見ていると人気NO.1は、焼き鯖定食だと思う。が、どのメニューもいい塩梅で家庭的、ほっとする味。
さんま定食をオーダー。2025年のさんまは・・・・
本日の選択肢はもちろん一択で、さんま定食。さんま定食に関しては他の定食と違い900円ではなく1,400円(入荷状況によって変動)ということに入ってから気づき、一瞬日和ったが、相変わらず季節に敏感にいたいので、初志貫徹でオーダー。
まもなくやってきました、さんま定食。

まず一見して思った。
今年のさんま、でかくね?
隣の席の常連さんが、お店の方に「今年のさんまは型が良いねぇ」と、その人はハンバーグ定食を食べていたのだけど僕のサンマを見ながら言っていて、僕が食べてんだから僕に言わせてくださいよ!と思ったが、まぁそのくらい型が良い。
なお、こちらのお店の定食には、メインの他、ご飯とお味噌汁はもちろん、おしんこ、冷奴、小鉢一品と、デザート(バナナとリンゴ)が定番でついてくる。バランスよし。
お客さんの年齢層は比較的高めなので、きっと近隣の会社の偉いオジサンとかもいるのだけど、さいごバナナとリンゴを食べている様子は、なんだか皆かわいらしく、バナナとリンゴの前では人間皆平等だと毎度思う。
脱線したが、早速いただきます。味噌汁とごはんと小鉢をつついて、メインのさんまと対峙。いや、ほんとでかいし、良いフォルムをしている。肩の強いピッチャーが頭部めがけて投げたら、たぶんヘルメット貫通する。

身をほぐしてさんまを、まずはそのままいただく。超、油のってる!デカいけど大味ではない。しっかりと旨味あり。大根おろしとすだちをかけて、さらにいただく。めちゃくちゃ美味しいぞ。外が炎天下であることを忘却し、この時点で自分の中で秋が訪れた。

無言で、意識をさんまだけに向け食べ続け、完食。人生においてあまり人さまから褒められることはないが、焼き魚をきれいに食べるスキルは比較的高く、妻から「あんたの長所は焼き魚をきれいに食べるとこやな」とお褒めに預かったこともあり、食べれるところはすべてきれいにいただきました。

すっかり満足して店を出る。空調が効いていた店内から外に出ると、やはり猛暑。だが、さんまを食べた自分にとってはこの猛暑さえも秋である。季節の中を走り抜けて、もうすぐ秋だね。
樹扇(きせん)
住所 福岡市中央区今泉1-23-4
電話 092-715-7022

