毎年8月30日・31日は、わが家にとって「夏休みの宿題を追い込む日」でした。家族が一致団結し、「宿題を終わらせる」ための2日間。それが娘にとっては当たり前の風景だったようです。
小学校最後の夏休み

わが家の娘が小学6年生だった、夏休みの出来事です。娘はまるでサザエさんに出てくるカツオくんのように、夏休みの終盤までのんびり構えていて、ラストスパートで一気に宿題を仕上げるタイプでした。
「今年こそ、落ち着いて新学期を迎えたい!」という思いで、私は早い段階から娘の宿題の計画表をつくりました。
夏の陣! 宿題との戦い

夏休みの大物宿題といえば、読書感想文、絵画、工作や自由研究など。何度も
「最後に残さず、早めにやるのよ」と言い、娘は
「分かってる。分かってる。やってるから」と返事はするものの、結局はギリギリになって「終わらないよ~」と悲鳴をあげることを繰り返してきました。
「今年こそ、心穏やかに始業式を迎えるぞ」そんな意気込みで迎えた夏休みも、いよいよ終盤に差し掛かります。
「今日はどこまで進んだの?」と聞く私と、「うるさい」「しつこい」と答える娘。それでも漢字ドリルや計算ドリルなどの基礎系は計画どおり終了。絵画については、近所で開催された「夏休みの絵を描くイベント」に無理やり参加させて、完成させました。「行きたくない。めんどくさい~」と文句を言う娘を連れ出すのは大変でした。
読書感想文は、指南書を片手に私がつきっきりで一文一文書きました。やる気がなく、ふてくされて机に向かう娘とその後ろに立って檄(げき)を飛ばす私。おそらく娘以上に私の方が課題図書を読んだと思います。
「親のほうが必死」問題、ふたたび
そして、残るは工作。夏休みも残り1週間となり、気持ちにじわじわと焦りが出てきます。いえ、娘ではなく私のほうが焦っていたのですが。娘はというと「今年は余裕」と、まるで全て終わったかのような態度で漫画とアニメにふける始末。
「短時間で作れて、それなりに見映えがして、本人も楽しくできるもの」と探しに探して、ケーキ屋さんの工作キットを購入しました。ポップでも「夏休みの工作にぴったり!」とおすすめされていました。「これならきっと娘の気分も上がるはず!」と渡した私でしたが、娘の反応はまさかの低空飛行。
期待していた反応はなく、「難しそう」「できない」「無理」と、不安と拒否感たっぷりの言葉ばかりが返ってきました。作り始めてからも、思っていた以上に苦戦の連続でした。娘の手つきはぎこちなく、木材はうまく切れず、丸めた粘土も崩れてしまいます。何日経っても形にならないケーキ屋さん。
そう、娘は想像以上の不器用さんだったのです。だんだんイライラしてくる娘と、じれったくなる私。
結局見るに見かねた私が、つい口を出し、手を出し…。
「あ、それはこうやって切るといいよ」
「ちょっと貸して。ここ、接着剤つけるね」そんな風にサポートしているうちに、作業の大半を引き受けていたのは、なんと私でした。
そして、夏休み最終日にケーキ屋さんは完成。さっぱりした表情で
「あ~、やっと終わった。ホント疲れたよ~」と言う娘を見て
「それを言いたいのはお母さんの方です」とつぶやく私。あれだけ「今年は落ち着いて終わらせたい」と思っていたのに、やっぱり最後までバタバタな夏休みになってしまいました。
親の努力、あっさり見抜かれました

そして迎えた始業式の夜。晩ご飯のときに娘が明るく言ったのです。
「先生がね、“お母さん、工作頑張りましたね”って言ってたよ!」… バレてたー!
もう恥ずかしくて恥ずかしくて「次の参観日は行けない」と心の中で悲鳴をあげました。たとえ私の力作だとしても、娘との思い出がぎゅっと詰まった小学校最後の工作は今もリビングの飾り棚にあります。今では笑い話になりましたが、これもまた、わが家らしいエピソードのひとつです。
(ファンファン福岡公式ライター/蕗野薹子)


