家庭訪問シーズンがやってきました。今年こそは完璧な部屋で先生を迎えたい! そう思っていたのに、現実はバタバタの連続。そんなわが家の“ありのまま”を、先生はどう受け止めてくれたのでしょうか。
家庭訪問に向けて大慌て

「家庭訪問って今週!?」小学2年の長男の連絡帳に書かれた予定を見た瞬間、思わず叫んでしまいました。仕事や家事に追われ、すっかり頭から抜けていた家庭訪問。リビングを見渡すと、おもちゃと洗濯物で足の踏み場もない有様でした。
そのまま迎えた当日、「完璧な部屋で迎えたかったのに」と落ち込みながらも、家族総出で“見た目だけ整える作戦”を決行しました。
「このあとは絶対に散らかさないでね!」と子どもたちに言い聞かせながら、棚を拭き、掃除機をかけ、大量のおもちゃを大きな箱に押し込んで重ね、ソファ横へ配置。なんとか“それっぽい”部屋に仕上がりましたが、気力も体力もすでに限界です。
見た目は整えたリビング、でも…

大急ぎで整えたリビング。子どもたちが描いた絵や作品は、普段どおり壁に飾ったままにしました。先生の到着予定10分前、ぐるっと部屋を見渡して「なんとか大丈夫かな」と一息。
でも、ソファの下にはぬいぐるみ、カーテンの陰には謎のおもちゃ。片づけても片づけても、いつも散らかるわが家のリアルが顔をのぞかせます。この時点で私はまだ自分の着替えも済んでおらず、これ以上片づける余裕はありません。
「どうか乗り切れますように」と、心の中で祈るばかりでした。
先生来訪! まさかのアクシデント発生

チャイムが鳴り、先生が到着。表面上はにこやかに対応しましたが、内心はドキドキが止まりません。
「こちらへどうぞ」とリビングに案内したその瞬間…。ガタンッ!! ソファ横に重ねていたおもちゃ箱が音を立ててあっけなく倒れ、中からブロック、ミニカー、ぬいぐるみが一斉に床へ散乱しました。
「うわ…」思わず声を上げ、固まる私。子どもたちも一瞬ぽかんとした後、慌てて拾いはじめました。
「ママこれどこに置くの!?」
「とりあえず箱に入れてー!」
「どっちの箱ー!?」
「どっちでもいいから全部入れてー!」パニック状態の私たち。“整えたリビング”の裏側が一瞬でむき出しになってしまいました。顔から火が出るほど恥ずかしく、でもどこかおかしくなってきました。
「先生、これが現実です…」私はなかば諦めたように笑って言いました。
そんなドタバタ劇を目の当たりにした先生は、ふっと優しく微笑み、こう言いました。
「いい雰囲気ですね」…え? 思わず耳を疑いました。先生はさらに続けます。
「普段から親子で協力し合っているんだなと感じます。子どもたちの作品もたくさん飾ってあって、温かいご家庭なんだなと思います」必死で隠したおもちゃも、直前の慌てぶりも、全部バレていたはず。それでも先生は、表面の“整ってなさ”ではなく、その奥にある家族の関係性や温かさを見てくれていたのです。
「いい雰囲気ですね」先生のひと言に救われた
完璧じゃなくていい。見た目を取り繕うよりも、毎日の子どもとの関わりこそが大切なんだと思えてきました。先生の言葉は、緊張していた私の心をふっとほどいてくれたのです。そして、ありのままのわが家を少し誇らしく思いながら、家庭訪問を終えました。
それ以来、「完璧にしなきゃ」と気負うことはなくなりました。次男の家庭訪問の時も、「うちはこんな感じです」と背伸びせずに自然体で迎えることができました。今もリビングは散らかりがちですが、ふと壁の作品を見ると、先生のあのひと言を思い出します。
「いい雰囲気ですね」それは、わが家にとって何よりうれしい言葉でした。
(ファンファン福岡公式ライター/Sasaki)


