Re:祖母が語った不思議な話・肆拾陸(46)「杣人の話」

私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

小学2年生のときに本を読んでいると知らない言葉にぶつかった。
「そまびとって何?」
側で繕い物をしていた祖母に聞いた。

「杣人(そまびと)というのは木樵(きこり)みたいな人を言う言葉」
「ふーん」
「そうだ。私のお父さんが旅先で一緒になって、それから親友になった杣人・水丸さんから聞いた話をしてあげようか?」
祖母はそう言うと話しはじめた。

……………………………………………………

【水丸さんの話】

杣人の水丸さんは木々の伐採の仕事を受け、H山に入った。
依頼された範囲はかなり広く、初日は切る予定の木に目印の白い紐を結んで回るだけで終わった。

月のない夜、山の小屋で寝ていると外からざわざわと草を踏む音がし、妙な気配が伝わってきた。
窓から覗いたが、暗くてよく見えない。
カンテラに火を入れ外に出て暗闇に向かって照らす。

ギラリ!

幾つもの目が光った。

兎、鼬、狸、山犬、猪…
木々の間から何匹もの獣がじっと水丸さんを見ていたがしばらくすると無言で闇の中へ消えていった。
あまりに異様な光景に冷水を浴びたような気がした水丸さんは、小屋にもどってからもなかなか寝付けなかった。
とはいえ仕事はやらなけばならない。

「山ん中じゃあいろんなことがあるもんだ」
そう気を取り直した水丸さんは朝早く小屋を出て伐採に向かった。

「あれ?印が無いぞ…」

昨日結んだはずの紐が一本も残っておらず、どの木を切るのかが分からない。
仕方なくもう一度印を付けるために紐を取りに小屋まで戻ると、入口に奇妙な物が置いてある。
印に使った紐がそこに山積みにされている。
どうやったのかは分からないが、紐は真っ赤に染められていた。
それを見た瞬間、全身で理解した。

「この山に手を出してはだめだ」

水丸さんはそのまま小屋にも戻らず山を下り、仕事を断りに行った。
山の持ち主は理由も聞かずに「そうか」とひと言だけだった。

「あんた無事で良かったな。何人も大けがしとるのよ、あそこ」
帰ろうとしている水丸さんに庭師が近寄って来て小さな声でそう言った。

……………………………………………………

「水丸さんはそれから二度とH山の木は切らなかったそうだよ」
「ふーん、おもしろいね」
「水丸さんはしょっちゅう父を訪ねてきていたから、お話もたくさん聞いたよ。そのうち話してあげるね」
「うん!」

チョコ太郎より

サーバーの変更で初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。
また、「続、新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」といった声をぜひお聞かせください。
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