家族で出かけた日のフードコートは、子連れにとって心強い存在です。周囲も同じような家族連れが多く、多少にぎやかでも気を遣いすぎずに済む。だからこそ、少しだけ気が緩む場所でもあります。でもある日、その安心感が、思わぬ形で私を赤面させることになりました。きっかけは、パパの何気ない一言。悪気は全くなく、むしろ、優しさから出た言葉でした。それでも、その声は想像以上に響き渡り、フードコート中の視線を集めることになったのです。
春休みのショッピングモール、にぎやかな昼下がり

その日は、春休み中の平日。家族三人でショッピングモールに来ていました。買い物を一通り済ませた頃には、ちょうどお昼の時間。
「フードコートで食べようか」そう言って席を探すと、同じような家族連れでほぼ満席状態でした。なんとか空いている席を見つけ、それぞれ食事を持ち寄ります。子どもは大好きなメニューを前に、嬉しそうに椅子に座りました。パパも向かいに座り、いつもの穏やかな雰囲気。何の問題もない、普通の家族の昼食風景でした。あの一言が響くまでは。
パパの愛情たっぷりの一言が、想像以上の声量で
食事が始まってしばらくした頃、子どもの手が止まりました。
「どうしたの?食べないの?」と私が声をかけるより早く、パパが前のめりになって言いました。
「いっぱい食べろよ!大きくなってママを守るんだぞー!」
その声が、思った以上に大きかったのです。一瞬で、周囲の空気が変わりました。隣の席のママがこちらを見て、少し離れた席の高校生たちも顔を上げる。正面に座っていた私は、スローモーションのように周囲の視線が集まってくるのを感じていました。
当の本人は、まったく気づいていません。にこにこしながら、「ほら、食べな」と続けています。私はただ、「お願いだから、もう何も言わないで」と心の中で祈ることしかできませんでした。
恥ずかしいのは私だけ?変わらないパパの笑顔

子どもは「うん!」と元気に返事をして、また食べ始めました。周囲の視線も、少しずつ元に戻っていきます。それでも、私の顔の熱はなかなか引きませんでした。
恥ずかしい。でも同時に、怒るほどのことでもない。パパはただ、子どもに愛情を伝えただけなのです。本人にとっては、ごく自然な一言。それが、少し大きな声だっただけ。目の前で何事もなかったかのように食事を続けるパパを見て、私はなんだか文句を言う気もなくなってしまいました。
思い返すたび、少しだけ笑える出来事に

食事を終え、フードコートを出たあと、私は思わず言いました。
「さっきの、ちょっと声大きすぎたよ」するとパパは、「え?そう?」と本気で驚いた様子。まったく自覚がなかったようです。その反応を見て、私はため息をつきながらも、思わず笑ってしまいました。悪気がないからこそ、責める気にもなれない。それが、パパという存在なのかもしれません。
そしてふと、あのとき周囲から向けられていた視線を思い返しました。あれは、蔑むような冷たいものではなく、どこか生暖かく見守るような視線だった気がします。
「あるあるだよね」とでも言いたげな、少しだけ微笑ましい空気。恥ずかしさでいっぱいだった私は気づけませんでしたが、きっとあの場にいた誰かも、同じような経験をしてきたのかもしれません。
恥ずかしさも、家族の思い出になる
あのときは本当に恥ずかしくて、できることならその場から消えてしまいたいと思いました。でも今では、思い出すたびに少し笑えてしまいます。子どもに向けた、まっすぐすぎる愛情の言葉。それを、何のためらいもなく口にできるのは、パパの良さなのかもしれません。
これからもきっと、同じような赤面事件は起きるでしょう。それでも、その一つひとつが、いつか家族で笑い合える思い出になっていく。そう思うと、あの日のフードコートで集まった視線も、家族あるあるの一コマだったのだと、今なら少し優しく受け止められるのです。
ただ次からは、せめて、もう少しだけ小さな声でお願いしたいと思っています。
(ファンファン福岡公式ライター/Happymam)





