木のおもちゃ屋で、ひとやすみ。【第1回 はなす】

はじめまして。福岡県新宮町で木のおもちゃ、絵本、ボードゲームの専門店「木のおもちゃ・おひさまや」の店主です。レジが開かない日はあっても、おしゃべりの花が咲かない日はない!木のおもちゃ屋店頭でのお客様とのやりとりと、おすすめしたおもちゃ・ボードゲームをご紹介します。
第1回目のテーマは「はなす」。お店だけど、話すだけでもOK!と、店主が考えるようになったきっかけは…?

目次

靴を脱いで上がる、木のおもちゃ屋さん

靴を脱いで上がる木のおもちゃ屋
木のおもちゃ・おひさまやの現店舗。お客様とおしゃべりするのが大好きです!

ドイツやスイスなど、ヨーロッパの木のおもちゃと世界中のボードゲームを扱う店を起業して、20年目です(2026年現在)。開業した当初、店舗は自宅ショップでした。

自宅のひと部屋をお店にしたので、家族が使う玄関と店の入り口が一緒。小学生のわが子が「ただいま」と帰宅すると、お客様が私と一緒に「おかえり」と言ってくださるような環境でした。

お客様は玄関で靴を脱いで、店に上がるスタイル。木の床に座ってゆっくり過ごす方が多く、お客様の平均滞在時間は1~2時間と長めです。

泣けるおもちゃ屋になりたい

ドイツ・drei Blatter社製の木製歯がため
白木の美しい歯がため。赤ちゃんが口にしても安全安心です。ドイツ・drei Blatter社製。

自宅ショップを始めてまもない頃、赤ちゃんと一緒に若いママさんがご来店。
赤ちゃんはまだ6カ月で、お顔には湿疹が目立ちました。

「木製の歯がためを探しているんですが…」とのことで、いくつかご提案しました。
「歯がため」は、歯が生え始めた赤ちゃんの歯茎のむず痒さを解消するために使う、噛む専用のおもちゃです。

他のおもちゃも少しご覧になったあと「これにします」と、ドイツ製の無垢の歯がためを持ってレジへ。
お会計した後、ママさんが「パパの仕事が忙しすぎて、ほとんど家にいないんです」と、すごく小さな、か細い声で話しはじめました。

わかる、わかりすぎる!孤独な子育て中の気持ち

旧店舗は6畳くらいの小さな部屋でした。シャンデリアを下げ、インテリアにこだわりました。


「最初は頑張ってたけれど、子育ても、子どもの病院通いも、家事も全部ひとりで切り盛りしているのがすごく辛くなってきて。実家も遠いから頼れないし」と、ポロポロ涙を流し始めました。

わかる、わかりすぎる。私の夫は子どものころから夢見た職業に就いていて、とにかく仕事が好きな人。飲み会も出張も転勤も多い一方で、子どもに合わせて仕事や予定を調整したり変更したりなんてことは、ほぼなかった。だからわかるわ、その寂しさ。

「子どもの皮膚科を転々としてるんです。湿疹がなかなか治らなくて」と、泣きながら話すママさん。
私は「私も。息子が小さいころ、重度のアトピー性皮膚炎ですごく悩んだんですよ。病院をいくつか巡り歩いたり、掃除や食事を見直したりして」と話しながら、そっとティッシュの箱を差し出し、ママさんの背中をさすります。私も色々思い出して、涙が出てきた…。

息子も学ぶ「さっきのお母さん、泣いてたね…」

帰りには笑顔になってもらいたい…。

あふれ出る彼女の辛い気持ちを「うん、うん」とひたすら聞いていると、玄関の扉が開いて「ただいまー」と小学生の息子が元気いっぱい帰宅してきました。

玄関を開けたら、床に敷いたマットの上で寝てる赤ちゃん。激しく泣いている大人の女性と、その人の背中をさするお母さん(うちのお母さんも、ちょっと泣いてるぞ)。

「えっ?」という表情を一瞬見せた息子でしたが、さっと靴をそろえて無言でリビングへ行きました。雰囲気を察したな、息子よ。

しばらくして落ち着いたママさんは「お店なのに、泣いちゃってすみません。でもスッキリしました」と笑顔になり、「また来ていいですか」とおっしゃいました。

「もちろん!またお待ちしてます!」と私も元気な笑顔でお見送りしました。話したい時、泣きたくなる時に「おひさまやに行こう」と思ってもらえたらいいな…。お見送りしながら、そんな思いが私の中にぽっと湧きました。

ティッシュの箱を持って自宅ショップの隣のリビングへ行くと、宿題をしていた息子がこちらをチラッと見て「お母さん。さっきの人、泣いてたね。でも帰るときは元気になってよかったね」とにっこり。

「うん。さっとリビングに行ってくれて助かったよ。話、聞こえた?」と尋ねると、「聞き耳をたててたけど、話の内容はわからなかった。でも、帰るとき、お客さんの声が明るかったから、元気になったんだなと感じた」と息子。

「うん、帰る時は元気になってくれてよかった」と私が言うと、息子は「お母さんもうれしそうね。お店、してよかったね」と言って、また宿題に戻りました。

話しかけないけど、話したい店主です

現在の「木のおもちゃ・おひさまや」店舗です。靴を脱ぐ土間までは、ベビーカーもそのまま入れます。

お店を始めた頃。休みの日は「お客さん」になるために、天神や博多に出てお店を歩いて見て回りました。
今も、何を買うでもないけどフラーっとお店に入って、今はこれが流行りなのか…と、店内を歩きながら眺めるのが好きです。オンラインショッピングをすることが増えたけど、やっぱり実店舗で品物を見る楽しさはあるよなぁなどと思いながら、何となく商品を手に取る。

その瞬間に「お客様、何かお探しですか?」と突然お店の人に話しかけられることがよくあります。
まずい、店の人にロックオンされた!と感じて(お店の方はうろうろしてる私を心配して声をかけただけなんですが)、私はビクッと飛び上がるように「いえっ!大丈夫です」と素早く、逃げるようにお店を出てしまいます。

逆に、とても自然にアプローチしてくださって、お店の人との会話がすごく弾むお店があります。そういうお店は「また行きたいな、あの人と話したいな」と思います。

おひさまやも「買い物の用事があるから行くだけじゃなくて、行きたくなる居心地のいいお店にしたい」と思わせてくれる素敵なお店があります。

私自身が、買い物中にお店の人に隣に立たれると緊張するたちなので、おひさまやではご挨拶をしたら最初からあれこれ話しかけず、お客様にはゆっくり、のんびり過ごしてもらうように心がけています。

靴を脱ぐお店ですが、靴下も脱いじゃう!?

とはいえ、お客様と話をすることが大好きなんです。
年齢も職業も国籍も、色んな方が来店されるので、お客様とお話することで世界がどんどん広がります。趣味や好きなこと、同じ経験をしたお客様とはお話しが盛り上がりすぎてしまうことも。お客様がお帰りになったあとで「あぁ、また長話して引き留めてしまった」と反省する日もよくある!

開業から11年目に現在の平屋の新店舗へ移転しました。リノベーションする時、また靴を脱ぐ店にしました。赤ちゃんが自由にはいはいできる店にしたかったし、やっぱり靴を脱ぐと大人もくつろげますよね。店に来るなり、靴下を脱いじゃう子も多いんですよ。

木の香りがして、店内BGMがない静かな空間です。
買い物しなくたっていいんです(買ってもらえたらありがたいけど!)
お子さんが木のおもちゃのサンプルで遊んでいる間、店主とちょっとおしゃべりしましょう。
あ、店主はぐいぐい話しかけませんので…どうぞ、話しかけてくださいね!

木のおもちゃ・おひさまや

住所:福岡県糟屋郡新宮町三代西1-9-10
電話:092-985-0540
営業:11:00〜16:00(定休日:月・火・水曜)
URL:https://www.instagram.com/ohisamaya

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

プロフィール

坂本秀子(木のおもちゃ・おひさまや)のアバター
坂本秀子(木のおもちゃ・おひさまや)

福岡県糟屋郡新宮町にある「木のおもちゃ・おひさまや」店主。
ロングセラーの絵本、ドイツなどヨーロッパの木のおもちゃ・ボードゲームの専門店として店に立つ傍ら、行政主催の子育て講座や図書館でのボードゲーム会の講師として九州を飛び回っています。店は今年で20周年です!

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