Re:祖母が語った不思議な話・その弐拾肆(24)「疳の虫(かんのむし)」

私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

「疳の虫封じ、やってあげようか?」
ある日、祖母がそう言った。
「それ何?」
けげんな顔をする私に祖母は語り始めた。

……………………………………………………………………

七歳の春、祖母は兄にいじめられて泣いていた。
それを見ていた父が兄を疳の虫封じに連れていくと言い出した。

「疳の虫?」
「意地悪したりわがまま言う子の中にいる虫だ。それを封じたら良い子になる」

兄は気が進まない様子だったが、父に頭を小突かれながら出て行った。
「待って〜」興味津々だった祖母は後を追った。

ひと山越えた隣村の大きな門のある家に着き、入口の鐘をじゃんと鳴らすと白装束の男が出てきた。
“あっ!あの時、シロを助けてくれた拝み屋さんだ”祖母にはすぐに分かった。

「今日は何用かな?」
「疳の虫封じを頼みます。兄の方だけで…」
「私もやりたい!」
祖母は父の言葉を遮り、そう言った。

父を別室に待たせ、道場に祖母と兄を招き入れると拝み屋さんは細長い紙にさらさらと文字のようなものを書き、それに火をつけた。
その灰と塩をお湯を満たしたお鉢に溶かし、両手をその中に入れろと言う。
祖母はわくわくしながら手を入れ、しばらくそのまま待った。

「もう良かろう。手を出して強く握りなさい」

2、3分間言われるままにしていたら、手を開けと言われた。
なんと、手のあちこちから細い糸のようなものが出ている!
「これが疳の虫?」
「そうだ。すぐに出るとは素直で良い子だ」と拝み屋さんはニッコリ。

兄には拝み屋さんの弟子がついていたが、何度もやり直していた。

「先生、出ません!」
その声を聞いた拝み屋さんは兄に正座をさせ、黙想するように命じ奥へ消えて行った。

「いつまでこうしてればいいんだろう…」
兄のつぶやきを聞いた祖母はすかさず
「意地悪が直るまでずっとしてるといいよ!」
「なんだとっ!」
兄が立ち上がって祖母を追いかけ回しているその時、拝み屋さんがもどってきた。

それから兄はまた正座させられ、苦い苦い薬を飲まされ、額に文字を書かれ、裸にされ、冷水をかけられ、煙でいぶされ、棒で打たれ…と散々な目に合ったあげく、やっと疳の虫が出た。

帰りがけに、父が礼を述べると拝み屋さんは
「兄の方はなかなか歯ごたえがある。私が預かろうか?」とニヤリ。

……………………………………………………………………

「帰り道兄さんはずっとぐすぐす泣いててね。それからしばらくは“疳の虫、疳の虫”ってからかったよ」
そう話し終えた祖母は満面の笑みを浮かべ、あらためて私に言った。

「疳の虫封じ、やってあげようか?」

チョコ太郎より

初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。また、「新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」「こんな話を知っている」といった声をぜひお聞かせください。一言でも大丈夫です!下記のフォームからどうぞ。

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