私の職場に、何かと“上から目線”で口を挟んでくる同僚がいます。悪気はなさそうなのですが、どうにも人の成果に乗っかったり、否定したりする癖があるのです。ずっと受け流してきた私ですが、ある日、自分でも驚くほど冷静に放った「たった一言」で、Sさんが固まってしまった出来事がありました。
何をしてもマウントを取ってくる同僚

私の職場に、Sさんという女性の同僚がいます。40代前半で、仕事はできる方ですが、とにかく上から目線がクセになっているタイプの人です。
誰かが成果を出せば、「そのやり方なら、前から私も実践していた」と言い、後輩が頑張れば「そのくらいはやれて普通だよね」などと評価を上書きしてしまいます。
私に対しても例外ではなく、どんな話題でも自分のほうが優位だと思えるところを探しています。
「資格取ったの?その資格って簡単だよね」
「仕事早いね!まあ、私ならもっと早く終わらせるけど」などと言ってきます。
そのたびに周囲は苦笑いをするしかありません。私は適当に受け流していましたが、ある日ついに限界が来ました。
積み重なった小さなストレス

決定的な出来事があったわけではありません。むしろ、日々の態度がじわじわとストレスを蓄積させていきました。
お昼休憩中の何気ない会話でのことです。他の同僚たちと子どもについて話をしていると、「うちの姪っ子はもっとしっかりしてるよ」と会話に入ってきたり、仕事の進行を相談すると、「そんな基本でつまずくの?」と返され、相談するんじゃなかったと思うほどです。
Sさんは悪気はなく、むしろ親切のつもりで言っている風なのがまた厄介でした。
ある日、同僚たちの間で新しい企画の成功例を共有するミーティングがありました。私は大きな成果を出したばかりで、その発表を任されていました。
「今日こそはスムーズに話したい」とわずかな期待を胸に会議室に入りました。しかし、その願いはあっさりと打ち砕かれたのです。
たった一言で、空気が止まった

私の発表が終わると、案の定Sさんが手を挙げました。何か言ってくる気配を感じていると、
「この成果って運が良かっただけだよね?タイミング的にも競合が動いてなかったし」
会議室の空気が一瞬止まったように感じました。そして、その言葉は私が一番言われたくなかったものでした。
私が何度も企画を修正して、ようやく形にしたものです。それを“運”の一言で片づけられた瞬間、胸の奥がカッと熱くなりました。
「まあ私ならもっと効率的にやれたと思うけど」と、Sさんは少し勝ち誇ったような表情を浮かべて続けます。空気が一層重くなった時、自分でも驚くほど冷静な声で、言葉がスッと流れ出てきました。
「Sさんは、いつ成果を出されたんですか?」
一瞬でSさんの表情が固まり、目が大きく開き、口がわずかに震えていました。会議室全体が静まり返りましたが、私はこう続けました。
「もちろん運要素もあったかもしれません。ですが競合が動いていないことはリサーチしていたし、努力の結果だと思っています。Sさんの“もっと効率的にできる”というやり方を、ぜひ具体例で教えてください。参考にしたいので」
私の声は震えていませんでした。怒りに任せた発言ではなく、むしろ冷静といえるほど落ち着いていました。
Sさんは視線を泳がせ、口を開きかけては閉じるを繰り返していましたが言葉が出てきません。普段は自信満々に語るSさんが、言葉を失っていたのです。まさか言い返されるとは思ってもみなかったのかもしれません。
「特には…」とSさんは絞り出すようにつぶやくと、視線を落としたまま黙り込んだのです。私の胸の奥にたまっていたモヤモヤがなくなり、すっと解放された気分でした。
言い返すではなく事実で返す
Sさんは明らかに以前より穏やかになり、他の人への態度も柔らかくなりました。誰かが成果を出した時も、素直に褒めている姿を見かけます。
私が放った一言は、怒りに任せたものではなく、「事実に基づいて丁寧に返した」だけでした。それが逆にSさんに響いたのかもしれません。人と向き合うときは、強く反発する必要はありません。ただ事実を静かに差し出すだけで、相手の態度を変えることがあります。あの日の私は、それを身をもって知りました。
(ファンファン福岡公式ライター/赤べこ太郎)





