福岡3つの蔦屋書店で初の凱旋個展を開催 アーティスト・茶薗彰吾とは何者なのか。 デザイナー、アーティストを越え、固定概念に向き合う表現活動

この冬、福岡の蔦屋書店の3店舗において、湘南を拠点に活動するアーティスト・茶薗彰吾さんの個展が開催されます。1人のアーティストにフォーカスし同時展開を行うのは、福岡の蔦屋書店でも初の試み。グラフィックデザイナーとして20年以上のキャリアを持ち、今、アートという領域に挑戦する茶薗彰吾さんとは何者なのか——これまでの歩みと現在の活動、福岡との関わりについてお話を伺いました。

目次

—大手グローバルブランドをはじめとするデザインやブランドの構築に携わりご活躍されてきた茶薗彰吾さん。‟アーティスト“として活動を始めたきっかけを教えてください。

茶薗:東京で生活をしていてどこか息苦しさのようなものも感じていたところ、コロナ禍でリモートワークになり、湘南に引っ越したことがきっかけになりました。

湘南は、出身である宮崎県にも少し雰囲気が似ていて、隣の人をあまり気にしないで自由にやっている感じがあって。そんなとき、新しい何かをはじめたいとの想いから神奈川県の起業家支援プログラムに参加したのですが、プログラムが進む過程で、相談相手から「茶薗さん自身がアーティストになりたいのでは」と言われてびっくりしたんです。「デザイナーだからアーティストにはなれないと思っているんですけど」と言ったら「そんなの関係ありますかね」という話で。

起業家支援プログラムの最終成果物として、自分の作品がどれくらい社会的価値があるのかを知るために、作品が一枚もない状態で準備をはじめ、いきなり個展を開催したのが一番最初のスタートになります。自身の思いを詰め込んだ作品が共感されて購入されていく。デザイン業務とは全く違う達成感の中に「いけるかも」という小さな可能性を見つけました。

—印象的な”5つの目”のキャラクターはどうやって生まれたのでしょうか。

茶薗:普段から外資系のブランディング会社でコンセプトに対して、ビジュアルを作る仕事をしていることもあり、自分で活動してみようとなった時にも、ロゴを作り、アイコニックなキャラクターを立ててブランドとしての見せ方を模索しました。アーティストがやらないような、少し戦略的でデザイン的な「見せ方」ということは、最初から強く意識していました。

「STEREOLIFE」というブランド名には、「固定概念と向き合う人生」というテーマが込められています。

現代人の目は2つでは足りないのではないか?というところから目を5つ書くようになり、多くの目で見つめることで‟気づき“を得ることを求める現代人の敏感さをビジュアル化するようになりました。

「デザイナーはアーティスト活動ができない」という僕の中の大きな固定概念が崩れた時に、自分の活動をはじめてみたことで、こんな世界が僕にも待ってるんだなって。社会のために働くこと以外に、もっと自由で楽しい可能性が待ってるんじゃないかっていうことは、作品を通してみんなに伝えたいですね。そしてそれぞれの素敵な‟気づき“にたどりついてくれたら嬉しいですね。

—今回の蔦屋書店の展開では、作品の展示のほかグッズ販売の展開もあります。なかなかお忙しいそうですが、そのあたりについてもお聞かせください。

茶薗:作品をつくりながら、それらをグッズ化してパッケージデザインを作って、商品の袋詰め、広報ツールやメルマガ、SNSの発信、個展のコスト計算なんかも含めて、いつか手が回らなくなるなと思いながら全て1人でやっています。デザイナーとアーティストを行き来する楽しい時間でもありますが大変ですね。

でもそうやって必死で生きていると、面白いことに、自分の作品や活動に興味を持って入れる人や、手伝ってくれる人が現れる。今でもグラフィックデザイナーとして会社に在籍しているんですが、活動を伝えるのは不安な部分もあったんですが、喜んで応援してくれたのは本当に嬉しかったです。とにかく大変なことも多いですが周りを巻き込みながら自分を中心に自己表現を追求する幸せを実感しています。

—今回の展示イベントは凱旋イベントでもあります。福岡ではどのように過ごされていたんですか

茶薗:福岡は、専門学校で学び、その後、グラフィックデザイナーと働きはじめた場所です。福岡はおしゃれな人が多くて、古着をカッコよく来ていたり、流行に左右されず他人を気にしないで、自分の「好き」を発信する。そういった福岡の街や人の雰囲気に感化されて自由に表現を行うようになり、それらが色々な形になっていく楽しさが福岡にはありました。

私が作るすべてが、私自身の「自己表現」でありたいと思っているので、作品と私という人間をセットで受け取ってもらえたら嬉しいし、「あ、またなんか面白いことを始めたぞ」と思ってもらえるような存在でいられたら嬉しいですね。そして驚いてもらえるような作品を作り続けたいですね。
※写真はすべて湘南 蔦屋書店の個展時のものとなります。

インタビューを終えて

デザインやアートの領域に捕らわれず、自由な表現活動を展開されている茶薗彰吾さん。自身の経験を一つひとつ丁寧にお話しくださる姿が印象的でした。

蔦屋書店の展示販売イベント「STEREOLIFE」では、六本松 蔦屋書店では最新作を中心とした展開、福岡天神 蔦屋書店、九大伊都 蔦屋書店では、これまでの個展で発表された作品と、各会場を巡ることで茶薗さんの創作活動の変遷と多様な表現世界を存分に味わうことができる内容になっています。在廊されるタイミングでは作品への思いなど、さまざまなお話が伺えそうです。ぜひ会場で茶薗さんの世界観をご体感ください。

(インタビュー・記事/六本松 蔦屋書店 前畑淳美  編集/ アルトネ編集部)

【関連イベント】辛酸なめ子×茶薗彰吾スペシャルトークイベント「福岡アート黙示録」

■日時:2025年12月6日(土)13:30〜14:30(開場30分前)
■ゲスト:辛酸なめ子さん、茶薗彰吾さん
■会場:六本松 蔦屋書店 ギャラリースペース
■定員 :70名
■参加費 :1,200円(税込)
■参加方法 EventManager+よりお申し込みください。
■問い合わせ:Mail:ropponmatsu.event@ccc.co.jp(六本松 蔦屋書店 イベント係)
詳細はこちら https://store.tsite.jp/ropponmatsu/event/art/50990-0947521105.html

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