【博多座】約8年ぶりに新作歌舞伎「あらしのよるに」上演! ヤギのめい役の中村壱太郎さんにインタビュー

オオカミとヤギの友情を描き、幅広い世代に愛される絵本シリーズを元にした新作歌舞伎「あらしのよるに」が2026年2月7日(土)~20日(金)、博多座(福岡市博多区)で上演されます。中村獅童さんの熱い思いから15年に生まれ、博多座では18年11月以来、約8年ぶりの公演です。オオカミのがぶ役は前回に続き獅童さんが務め、今回、ヤギのめいを演じるのは映画「国宝」で歌舞伎の所作指導を担当した中村壱太郎(かずたろう)さん。11月下旬に博多座で開かれた取材会に壱太郎さんが出席し、本作への思いや博多座の印象などを話しました。

目次

「子どもの笑いを誘う義太夫に古典の力感じる」

「絵本の世界観を歌舞伎にしているのが魅力です」

―2024年9月の京都・南座公演で、めいを演じられています。新作歌舞伎「あらしのよるに」の魅力はどんな点にありますか。

絵本を元にしているのが大きな魅力だと思います。また、古典の演目では狐(キツネ)や鷺(サギ)といった動物を演じる場合も多いので、オオカミとヤギに着目した点も歌舞伎にとても合っているなと感じます。めいが「がぶは友達」と言う場面が好きなのですが、友達という感覚は年齢や国境、種族を越えることができるかもしれない。そんな人と人とのつながりの奥深さについても改めて考えさせられました。見終わった後にも涙がこみ上げてくるし、優しい気持ちになれます。

―めいを演じるにあたり、工夫された表現などあれば。

初演時にめいを演じられた(尾上)松也のお兄さんに、どうされていたのか聞きました。すると「ヤギのひづめは二つに分かれているのが特徴だから、手の握り方を注意していたよ」と教えてくださって、僕も手の握り方を工夫しています。あとはヤギの“もふもふ感”を大事に演じています。

「こんなふうに握って演じているんですよ」

―改めて感じる古典的な歌舞伎表現の素晴らしさなどありますか。

たくさんあります。一番は、義太夫を取り入れている点。義太夫は登場人物の心情を語ったり、時代背景や場面の説明をしたりするのが役割です。その義太夫を取り入れて「ここは野原。ウキウキしためいが出てきます」とか、おなかをすかせているがぶの心情の「友達だけど食べたい」とかを語る。これまでの新作歌舞伎には義太夫のこんな使い方はなかったのですが、これを聞いた客席の子どもは面白いようで笑いが生まれる。すごく感動的で、義太夫のすごさ、古典の力を再確認しました。

「歌舞伎は楽しい! と子どもに思ってほしい」

「劇場に子どもの笑い声が響く、なんとも特別な歌舞伎作品」

―本作は「3歳以上入場可」です。その点で意識することは。

子育て中のお母さんやお父さんから「子どもを預けられないので、歌舞伎を見に行けない」という声をよく聞きます。僕も子育て世代ですし、子どもも一緒に劇場に入れるのはうれしいと思うんです。上演中に騒いでも構わないし、僕らも客席を野原だと思って駆け回り、お客さまとの交流ができるお芝居だと意識したい。そして歌舞伎に初めて触れる子どもには「歌舞伎って楽しい」と思ってもらいたいですね。今回は獅童のお兄さんのご子息の陽喜(はるき)君(7歳)と夏幹(なつき)君(5歳)が初めて博多座にお目見えします。幼い頃のめいを演じる陽喜君に負けないかわいらしさを残して演じたいなと思います(笑)。

―陽喜君、夏幹君とのエピソードがあれば。

南座公演の時、劇場に遊びに来てくれました。その時はまだ彼らは「あらしのよるに」に出演していなかったのですが、「めいでしょ」と言ってずっと近くにいてくれて。夏幹君は楽屋で化粧している時もずっと膝にくっついていて、いつの間にか寝ちゃうんですよ(笑)。めい役で良かったなと思いましたね。今回は2人が出演する(夏幹君は幼い頃のがぶ役)ので思いもひとしおです。

「演じていて楽しく、毎回感動しています」

「歌舞伎が注目されている今、初めての方にも楽しんでほしい作品です」

―福岡滞在中に楽しみにしていることは。

公演中はずっとヤギとして過ごしているので、草を探しに行きますかね(笑)。福岡市の動物園にも行きたいですね。

―博多座の印象を。

(24年10月上演の)スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」に出演した時のことがとても印象的です。その時は(中村)隼人君、(市川)團子君、(中村)米吉君と4人の“看板”で、博多座という大きな劇場にどれだけのお客さまが来てくださるのか不安でした。でも、初日に劇場前でイベントなどをさせてもらったところ補助席も出て満席になり、僕らに大きな力を与えてくれました。

「ぜひお子さんと一緒に見に来てください」


―博多座公演を楽しみにしている人にメッセージを。

中村壱太郎なりのヤギの表現をぜひ見に来ていただけたらうれしいです。とにかくやっていて楽しく、毎日感動する作品なので、その思いを皆さまに届けたいと思います。

画像提供:博多座

二月花形歌舞伎「あらしのよるに」

日時:2026年2月7日(土)~20日(金) 11:00/16:00
   ※16:00の上演スケジュールは下記サイトで確認を
   ※12日(木)休演
場所:博多座(福岡市博多区下川端町2-1)
料金:A席15,500円、特B席12,500円、B席9,000円、C席5,500円 ※税込み
   ※17日(火)と19日(木)の夜の部は割引料金(各1,500円引き)
   ※3歳以上入場可。1人につき1枚のチケットが必要
   ※チケットの一般発売(インターネット、電話予約)は12月6日(土)10:00~
問い合わせ:博多座電話予約センター
電話:092-263-5555
博多座公式サイト https://www.hakataza.co.jp/lineup/123

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