静かに時が流れる歴史の街・大分県臼杵。陶芸家の父を持ち、臼杵焼の広報を務める臼杵市出身の宇佐美タキさんが、友人のLUEさんとともに辿る“祈り”と“技”の旅。後編では、臼杵に根づく文化や伝統に、より深く触れる時間が始まります。
崖に刻まれた61体の磨崖仏が守り続ける、土地の祈り

旅の後編は、国宝「臼杵石仏(磨崖仏)」から。
緑深い崖に静かに佇む61体の磨崖仏は、平安時代末期から鎌倉時代に彫られたとされ、時代を超えてこの地の信仰に寄り添ってきました。
「土地に宿る力がある」と語る宇佐美さん。仏像の穏やかな表情に見つめられると、胸の奥にふわりと安堵が広がっていきます。
参道には木漏れ日が降り注ぎ、歩くほどに気持ちが澄んでいくよう。

石仏群は「ホキ石仏第1群(堂ケ迫石仏)」「ホキ石仏第2群」「山王山石仏」「古園石仏」の4つに分かれ、61体すべてが国宝です。
一体一体に込められた祈りの深さに、思わず息をのむひとときです。


石仏の前には心安らぐ里山の風景が広がっています。春は桜と菜の花、夏は蓮畑、秋は紅葉。季節ごとの彩りが、訪れる人をやさしく迎えてくれます。
「うすき皿山」で感じる、幻の焼き物が生まれる“手仕事”の時間

臼杵石仏のすぐ近くにある「うすき皿山」。
アトリエ、ギャラリー、喫茶室、食堂がひとつにまとまり、臼杵焼の世界を丸ごと体感できる場所です。
一度は途絶えた臼杵焼を復興したのは、陶芸家・宇佐美裕之さん。江戸時代の器との運命的な出会いから、その美しさを現代に蘇らせました。

今回は「アトリエ皿山」で豆皿作りに挑戦。
指先で触れる土はあたたかく、形が整っていくたびに心がすっと落ち着いていきます。ものづくりに没頭する時間は、自分自身と静かに向き合う贅沢なひととき。

白を基調とした「ギャラリー皿山」には、凛とした佇まいの器がずらり。毎日の食卓が素敵になる、そんなイメージが自然と湧いてきます。喫茶室では、臼杵焼の器に盛られるスイーツをいただき、中国茶の甘い香りに癒やされました。

シャインマスカットの「秋のタルト」(935円)と臼杵の栗の渋皮煮やオーム乳業の生クリームを使った「マロンシャンティ」(1,100円)など体になじむ素材を丁寧に選んだ逸品ばかり。

中国茶は甘い香りとフルーティーな飲み口の「鳳凰単叢(ほうおうたんそう)」(1,375円)でした。

さらに、季節の恵みを味わう「USAMI食堂」では心と体がほっと緩むようなやさしい料理が並びます。
人気は「季節のごはん」(2,200円)です。この日は、温州ミカンとニンジンのラペ、シメジのクリームコロッケ、有機卵を使っただし漬け卵などを堪能。体に優しい12品目のおかずが臼杵焼の器に鮮やかに盛られます。
「後藤製菓」で出会う伝統の“せんべい手塗り体験”の奥深さ

江戸時代から続く「うすきせんべい」。
その伝統を今につなぐ「後藤製菓」で手塗り体験に挑戦しました。

木目模様のせんべいに、はけで蜜をそっと塗り重ねていく—。
思い通りにいかず戸惑いながらも、繰り返すうちに集中が深まり、気づけば夢中に。
職人が1日に1人1,000枚を仕上げると聞き、その技の高さにただただ驚くばかりです。

焼きたてのせんべいを頬張り、有機ショウガ100%の発酵ジンジャーエールで喉を潤す。
そんなひとときも旅の幸せのひとつ。
旅の締めくくりに「竹巧彩」で出会う、美麗な竹細工の世界

最後に訪れたのは、竹工芸作家・毛利健一さんの工房「竹巧彩」。
店内にはバッグやテーブルウエアなどが整然と並び、竹が生み出す陰影や曲線の美しさに思わず見惚れてしまいます。

伝統を守りながら、現代に寄り添ったデザインを丁寧に生み出す—。
そんな職人の息づかいが伝わってくる空間でした。
【INFORMATION】
臼杵石仏

代表的な大日如来像をはじめ、その規模や数量、彫刻の質の高さなど、日本を代表する石仏群。2025年に国宝指定から30周年を迎えました。観覧料大人550円、小人270円。
住所:大分県臼杵市深田804-1
電話:0972-65-3300(臼杵石仏事務所)
うすき皿山

里山や田園に囲まれた臼杵焼の複合施設。洗練された上品な器の数々が魅了。
「アトリエ皿山」では「豆皿作り体験」(1人1枚4,000円)「本格型打ち体験」(1人1枚5,800円~)「金継体験」(1人1枚11,400円)の3つが可能です。
「ギャラリー皿山」は臼杵焼きを展示・販売。ベーシックな白や黒のほか、ブロンズ、シルバーの器も。
「皿山喫茶室」では宇佐美有香さんが体になじむ素材を使って作るお菓子が味わえます。
「USAMI食堂」では、12品目のおかずが彩る「季節のごはん」(2,200円)や「とり天定食」(1,380円)などを提供。
「菓子製作所 engawa」ではマドレーヌなどの焼き菓子やケーキを販売しています。

住所:大分県臼杵市深田816-3
電話:0972-65-3113(石仏観光センター)
URL:https://www.instagram.com/usarayama?igsh=MTEyamUzOHk4eXRtaQ==
後藤製菓 本店「石仏会館」

100年以上の歴史を有する老舗生姜せんべい店。近年は有機ショウガの自社栽培や、発酵ジンジャーエールなどの飲料製造なども手がけている。本店「石仏会館」では、焼きたてを試食できる工場見学や、うすきせんべい手塗り体験もおすすめ。※体験は11:00、14:00の2部制で要予約。(1組4,400円~)
住所:大分県臼杵市深田118
電話:0972-65-3555
URL:https://usukisenbei.com/
竹巧彩

デザインから制作、販売までを手がける工房。2代目毛利健一さん、3代目毛利雄造さんらがオリジナリティーの高い商品を展開。人気のバッグをはじめ洋服などとのトータルコーディネートを提案。
住所:大分県臼杵市佐志生2091-1
電話:0972-68-3117
URL:https://www.instagram.com/chikukousai_official/
DJ LUEさん

LOVE FMのパーソナリティー。「Top of the Morning」「IRIE MUSIC」などに出演。
宇佐美タキさん

臼杵焼の広報を担当。
「文化的なものは、若い人たちが日常の中で使わないと残っていかないと思います。だからこそ、できるだけ日常の中に取り入れていくことに意義があると感じています。極める人は極める人として存在してほしい。でも私は、堅苦しく見えないように、もっと身近に感じてもらえるような発信をしていきたいです。日本は職人の国。職人さんはリスペクトされる職業として認識されるべきだと思っています。そこに価値を持たせたい。そんな思いを強く抱いています」
臼杵観光協会
URL:https://www.usuki-kanko.com/





