彼氏と過ごす時間が、こんなにも幸せだなんて…。笑って、話して、ただ一緒にいるだけで心が満たされていたのに、デートの最中に届く親友からの止まらないLINE通知が、私をざわつかせたのです。
初めての彼氏とデート

初めての彼氏とのデート。手をつなぐだけで胸が高鳴り、笑い合う時間がただ嬉しくて、何度も心の中で「幸せだな」とつぶやいていました。
ランチを食べて、ショッピングモールで映画を観て、カフェでアイスを半分こ。「こういう時間がずっと続けばいいね」彼がそう言って笑った瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
恋愛って、こんなに穏やかでやさしいものなんだ。そう思いながら、スマホの存在なんてすっかり忘れていました。
急に届いた親友からのLINE

アイスを食べ終わり、スマホを開くと、LINEの通知が10件以上も届いていました。送り主は、高校時代からの親友。
「その人だけはやめな」
「見る目ないね」
「ほんとに付き合ってるの?」
彼と親友は中学時代の同級生で、高校は違うけど塾が同じだと言っていました。彼のことをよく知っているはずの親友がなぜそんなことを言うのか、まったく理解できませんでした。心臓がドクンと嫌な音を立て、指先が冷たくなりました。
彼は目の前で「コーヒーもう少し飲む?」と笑顔で聞いてくれましたが、私の頭の中は真っ白。「うん…どっちでもいいや」と笑ってごまかしました。
追いLINEが止まらない…

その後もLINEは止まりませんでした。
「なんで返さないの?」
「ほんとにあの人でいいの?」
「気づいてないだけだよ、裏がある」
既読をつけるたびに、新しいメッセージが飛んできました。ベンチに座り、スマホを握りしめながら、胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちになりました。
彼が心配そうに「大丈夫?何かあった?」と顔をのぞきこんできます。「ううん、ちょっと友達からLINEが来てて…」そう答えながら笑ってみせましたが、頬がひきつっていたと思います。
「その人だけはやめな」「見る目ないね」親友からの言葉が何度も頭の中でリピートされました。
親友は昔から面倒見がよく、恋愛相談もたくさん乗ってくれた人でした。だからこそ、彼女の言葉が刺さりました。「なにか知っているのかもしれない」「過去に何かあったのかな」そんな不安が膨らんでいきました。
そして届いた一文。
「どうせ本気じゃないよ、その彼」
その瞬間、胸の奥が冷たくなりました。「なんでそんなこと言うの?」という言葉が喉まで出かかりましたが、指は動かず、涙がにじみました。そんな私の手を、彼がそっと握りました。
「無理しないでいいよ。もし何かあったら話してね」その優しさに救われるような気がしました。私は静かにスマホをバッグにしまい、深呼吸をひとつ。「うん、歩こう」そう言って立ち上がったとき、自分の中で、彼女に対する気持ちがすぅーっと冷めていくのを感じました。
止まらぬLINEの理由

数日後、共通の知人から衝撃の一言を聞きました。
「実は、彼女はずっと彼のことが好きだったみたいだよ」
あのLINEの嵐の理由が、一瞬でわかりました。「やめな」「見る目ないね」あれは忠告なんかではなく、“嫉妬”からくる言葉だったのです。悲しみもありましたが、事実を知ることができた私は心が軽くなりました。
あの日、秋風の中で歩いた帰り道。街灯に照らされた彼の横顔がまぶしく見えました。私が信じるべきものは、通知の数でも、 誰かの意見でもなく、隣で笑ってくれるその人の表情だったのです。ありえないのは、彼氏ではなく、親友のほうでした。でもそれも含めて、初めての恋が教えてくれました。
(ファンファン福岡公式ライター/ぴち)





