子どもの頃から人一倍怖がりで夜に1人でトイレにすら行けなかった私。そんな私がある日、入院することに。20代となっても絶対夜にトイレには行きたくなかったのですが、尿意に襲われた私は我慢できず勇気を出してトイレへ行くことに。しかしそこで私が見たものは…。私がより一層夜にトイレに行けなくなるきっかけになった、本当にあった恐怖体験です。
怖がりな私が人生初の入院

子どもの頃から怖がりで夜に1人でトイレにすら行けなかった私。20代の頃、人生初の入院を経験することに…。
床が変わると眠れない私は、ある日深夜0時を回っても寝つけずにいました。4人部屋だったので病室のベッドで寝ている分にはさほど怖さは感じられませんでした。
当たり前のことですが、夜中なので昼間のような活気や慌ただしさはなくシーンと静まり返った病棟。できるだけ夜にトイレへ行きたくないと思っていたのですが、その日に限ってどうしても我慢できなくなり、渋々真夜中にトイレへ行くことに。
私は視力が悪く眼鏡をかけていましたが、よからぬものが見えてはいけないと思い、わざと眼鏡をかけずにトイレへ。しかし自分でも心臓が「ドクドク」と脈打っているのがわかるほどとても緊張していました。「トイレへ行くだけだから大丈夫」と自分に言い聞かせながら病室を離れました。
真夜中の薄暗い病棟で遭遇した小さな影

病室を一歩出るとシーンと静まり返った薄暗い廊下が広がっていました。
病室を出た瞬間、何かに吸い寄せられるように私はトイレとは別方向の隣の病室に視線を向けました。そこにはぼんやりと小さな黒い影が見えました。
余計なものが見えないように、わざと眼鏡をかけずに部屋を出ましたが、その黒い影は私の視力でもぼんやりと見えました。小さな子どものような黒い影。看護師さんではないことは明白でした。
私は一瞬凍りつきましたが強い尿意を覚え、とにかくトイレへ急ぎました。
病室での恐怖体験
トイレを終えてベッドに戻っても私はしばらく眠れませんでした。どのくらいの時間が経ったのか…ようやくウトウトしかけた頃のことです。
「ガシャガシャッ!」と金属同士が当たって響く異様な音とともに、ペタペタと裸足で歩いているかのような奇妙な足音が静かな病室に響き渡りました。その音は病室の中をうろうろした後、立ち去っていきました。
私は心臓が止まりそうな恐怖感でいっぱいになり声も出ず、頭から布団を被り身を縮こまらせて時が過ぎるのを待つしかありませんでした。その後のことは眠ってしまったのか記憶を失ったのか、覚えていません。
看護師から聞いた驚きの事実

気がつくと朝になっていて、夜勤の看護師さんが朝の巡回にきました。私が真夜中の出来事を伝えると恐怖の正体が明らかに…。私が黒い影を見た時間帯は夜勤スタッフはナースステーションにいたと言うのです。そしてその看護師さんが言うには、真夜中の小さな影の目撃は他にも多数あるとのこと。
私が入院していた病棟は産婦人科病棟で、小児科病棟と同じフロアです。小児科にはがんや治りにくい病気の子どももたくさん入院していて、残念ながら亡くなる子どもも少なくないそうです。産婦人科病棟には出産前後のお母さんたちが多く入院しています。
もしかすると小児科で亡くなった子どもの魂が、お母さんを探してこちらの病棟に来ているのではないかという話でした。病気で亡くなった子どものことを考えると可哀想な気もしましたが、私にとっては背筋が凍る恐怖体験でした。
真夜中のトイレがトラウマに
その出来事から私は真夜中にトイレに行くのがより一層怖くなりました。病棟の廊下で見た小さな黒い影、そして「ガシャガシャッ」という異様な金属音と「ペタペタ」という足音はいまだに鮮明に私の記憶に残っています。夢だったのか、現実だったのか…今でも思い出すたびにゾッとします。
あの出来事以来、家ではもちろん、旅先でも夜中にやむを得ずトイレに行くときは、あちこち電気をつけたり、夜中に尿意で起きないよう寝る前の水分摂取は控えたりするようになりました。
(ファンファン福岡公式ライター / つきのあ)


