見知らぬ土地で慣れない子育てをスタートした私に、いつも気さくに声をかけてくれる隣のおばさん。実は、子ども達がいない時には私を無視する、二重人格のような変わり者だったのです。私は、ある対処法のおかげで、今でも良好なご近所づきあいを続けることができています。
実母のように優しい隣のおばさん

長男と長女をまだ家庭保育していたころの話です。自宅前で遊んでいると、たまたま通りかかった近所の人がよく声をかけてくれました。周りに知り合いがいない私にとって、家族以外の大人と話ができてとても嬉しかったのを覚えています。
特に隣に住むおばさんは、まるで家族のように関わってくれました。時には、ぐずる子どもと私の間に入り、あやしてくれることも。
やがて子ども達も、隣のおばさんのことを「ばあば」と呼ぶほど親しい間柄になりました。実家が遠く、孤独な子育てをしていた私にとって、隣のおばさんは実母のような存在でした。
二つの顔をもつ隣のおばさんに困惑

長女が1歳を過ぎた頃、子ども達を保育園に通わせることにしました。慣らし保育が始まり、子ども達を保育園に送って一人自宅へ戻っていた時のこと。隣のおばさんを見かけたので、私は元気に挨拶をしました。すると、隣のおばさんは日傘で顔を隠して、挨拶もせず通り過ぎたのです。
次の日の保育園の帰り道も、そのまた次の日も、隣のおばさんは私と会うたび知らん顔。私は次第に声をかけづらくなっていきました。
保育園がお休みのある日、子ども達と近くの公園へお散歩に行こうと、玄関を出た時のことです。ちょうど家の前で隣のおばさんとばったり遭遇!子どもがいる手前、声をかけないのもなぁと思っていると、
「あら、今からおでかけ?ばあばも行きたいな~。」と、隣のおばさん自ら陽気に声をかけてきたのです。
「え?あんなに無視していたのに、なんで?」
翌日、保育園へ送った帰り道に隣のおばさんに会うと、また他人のように知らん顔。それからも、子ども達といる時は気さくで優しく接してくるのに対して、私一人とすれ違うときは完全無視してきました。
「一体どう接すれば…。」
初めての保育園、これから始まる新しい仕事のこと。それに加えて、態度が急変した隣のおばさんのこと。私は、相当気が滅入ってしまいました。
もやもやして夫に相談すると、
「子ども達に好かれたいだけじゃない?」と一言。
「確かに!」
これまでの隣のおばさんの行動を振り返ると、夫の見解はあながち間違ってはいません。子どもがいるかいないかで挨拶の使い分けをされていた事に気付いた私は、腹立たしさと同時にあきれ返ってしまいました。
変わり者のおばさんは、実は〇〇

「まるで別人のようだな」と思った私は、あることをひらめきました。子どもといる時のおばさんは明るい“A子さん”、私と会う時のおばさんは無口な“A美さん”。そんなふうにキャラクターを設定して、勝手に双子だと思って接することにしたのです。
「今日はA子さんが来た」と心の中で面白おかしく思ってみると、隣のおばさんに会うのも億劫ではなくなりました。
そんな隣のおばさんとは対照的に、3軒向こうに住む女性は、いつもほがらかで気持ちのいい挨拶をしてくれます。もちろん、私一人のときも常に笑顔。
ある時、隣のおばさんに素通りされた直後に、その女性と挨拶を交わしていました。もやもやしている私に、女性は“こんな人なのよね”と言わんばかりの表情でアイコンタクトを送ってきたのです。もしかしたら、隣のおばさんは近所で評判の変わり者なのかもしれません。
子を持つ親として、誰にでも笑顔で挨拶できる人でありたいと考えさせられた出来事でした。子どもがもう少し大きくなったら、「相手によって態度を変えるような大人になってはいけないよ」と教えようと思っています
(ファンファン福岡公式ライター/ kotone)


