神社の魅力を再発見! 福岡・鳥飼八幡宮宮司に学ぶ“すてきな神社さんぽ”のヒント

「神社への参拝を毎日の習慣にしませんか?」と山内圭司宮司

福岡県には約3,400もの神社があるといわれています。秋の散策にぴったりな神社の楽しみ方や見どころを「鳥飼八幡宮」の山内圭司宮司に聞きました。魅力を再発見するヒントが満載です。慣れ親しんだ神社も、まだ訪れたことのない神社も“すてきな神社さんぽ”で楽しんでみませんか。

目次

屋根に宿る神社の個性

鳥飼八幡宮の本殿は伝統的な「神明造」

ー社殿を見るとき、どこに注目すると楽しめますか?

社殿の個性は、お祀(まつ)りされている神様や創建年代、地域によって出てきますが、分かりやすいのはまず屋根の形ではないでしょうか。
さまざまな形式があります。例えば、三角形のままの「切妻造」、四方に傾斜する「寄棟造」、切妻造と寄棟造の融合した「入母屋造」などです。屋根の傾斜にも違いがあり、まっすぐなものや丸みを帯びた「てりむくり」と呼ばれる形も見られます。屋根から角のように突き出た「千木」、丸い木材を並べた「堅魚木(かつおぎ)」の有無や形状も神社ごとに異なります。

彫刻や彩色も大きな見どころで、江戸期以降は地元の職人による精緻な装飾が加わり、地域の特徴が出ます。「蟇股(かえるまた)」や「懸魚(げぎょ)」に刻まれた神話や動植物の意匠、梁(はり)が柱から突き出たように付けられた「木鼻」にも装飾されています。
何社か巡って見比べると、違いや共通点が見つかって楽しいと思います。

力強い鳥居 九州北部は砂岩製が主流

ー鳥居や狛犬(こまいぬ)の見方のポイントは。

鳥居も社殿と同様に、祭神や時代によって形が変わります。鳥居というと、石のイメージが強いと思いますが、石の鳥居が一般的になったのは、江戸時代以降だといわれています。丸木を組み合わせただけのシンプルな「神明鳥居」や丹塗(にぬ)りの鮮やかなお稲荷さんの鳥居など、さまざまな様式があります。

笠木や島木(鳥居の横の部分)、柱の形や傾きや反りなども細かくあげるとキリがありません。また額の文字なども注目すると意外な著名人の筆によるものもあります。一般的に、九州北部には砂岩製の重厚な鳥居が多く、直線的で力強い意匠が特徴だといわれています。

狛犬は、表情やシルエットに注目してください。阿吽(あうん)の姿をしていますが、口を開いた方は、ニカッと笑っているような表情やキリッとした表情など個性豊かです。時代が下るほど写実的な毛並みや表情が増し、明治以降は西洋彫刻の影響もあって写実的な狛犬も登場します。

鳥飼八幡宮の石鳥居

ー「鳥飼八幡宮」の鳥居、狛犬、社殿の特徴は。

鳥飼八幡宮の表参道の鳥居は明治維新後に建てられました。黒田藩の最後の藩主長知公のご子息の長成公、十歳時の筆と伝わっています。

表参道を進み神門の中に、漆塗りの狛犬が鎮座しています。“細マッチョ”な均整の取れた体型ですが、表情が豊かです。神門をくぐるとある社殿正面の石の狛犬は、りりしい表情で社殿を守ってくれています。

社殿は “茅葺(かやぶ)き壁”を用いた日本有数の建物です。賽銭箱の奥は逆V字型に巨石が立っています。「手を合わせているよう」「天岩戸」といろいろな印象を語られますが、石柱は合わせて10本あります。本殿は「神明造」といって、伊勢神宮と同じ様式。屋根は伊勢神宮と違い銅葺きです。堅魚木は9本あります。

自然を神とした信仰が息づく境内

ー境内の庭園にはどんな意味がありますか?

古い時代の神道は社殿を持たず、自然の森林、巨木、巨石などに神様が宿ると信じられてきました。神籬(ひもろぎ)信仰、磐座(いわくら)信仰ともいわれます。

境内の庭園は、そのような古の信仰を受け継いでいる側面があります。自然を神としていたことから、四季の移ろいなども感じられるように境内の植栽や石の池などを配置し、社殿と一体となって、美しさとご神徳を感じられるようにしつらえられています。

鳥飼八幡宮の「夫婦楠」。注連縄に「ご縁むすびのひも」をちょう結びにすると願い事がかなうとか

ー参道や池など、神社の景観にはどんな役割がありますか?

庭園と同じく、古代から続く日本の信仰の伝統を示すとともに、日本の自然の美しさを感じられるようにそれぞれ考えられています。
参道は、神様のもとに参拝する心を整える道です。参拝した後は、その日その時の誓いや祈りを振り返りつつ、日常へ戻っていきます。

八幡宮の池は「放生池」と呼ばれることが多いですが、とらえた生き物を放して命を助けるための池です。命の大切さや自然との調和を象徴しています。そのほか水の神様を祀るよりしろの意味もあります。

都市型の神道式納骨堂「祖霊殿」

令和と江戸が調和する「鳥飼八幡宮」

ー「鳥飼八幡宮」の境内の見どころを教えてください。

鳥飼八幡宮は、茅葺きの拝殿、神明造の本殿、2021(令和3)年にグッドデザイン賞を受賞した祖霊殿、太陽光を取り込む光の宮などの新しい建物のデザイン性、車椅子や杖をついた方でも参拝できるよう整備した参道、福岡県の木々や花を中心とした神苑などが特徴的です。2026(令和8)年春までに神楽殿や池、弁財天のお宮などが落成し、遷宮事業が完成します。

新しい技術や建材を用いていますが、鳥居や七五三掛石、灯籠などは元々鳥飼八幡宮にあったものを再利用し、江戸時代前期に建てられた神門も健在です。令和の建物と江戸時代の遺産、自然が調和する景観をゆっくり感じていただきたいです。

鳥飼八幡宮の「息吹の銀杏」

ー秋の鳥飼八幡宮、どんな風景が広がりますか?

参道、境内には落葉樹がありますので紅葉が楽しめます。特に参道には御神木の「息吹の銀杏」があり、ツワブキの花とともに参道を黄色に染めていくさまは圧巻です。季節の花や木々が植栽されていて、その変化を楽しみに参拝に来られる方も増えてきています。

お守りは“小さな神社” 由緒がデザインに

御朱印

ー御朱印、御朱印帳、お守りなどにはどんな思いが込められていますか?

御朱印は神社参拝の記念として受けられる方が増えています。御朱印は記念スタンプではないので、時々見直しては参拝時にどんな祈りや誓いをしたのかを思い出とともに振り返っていただきたいです。
御朱印帳は表紙にその神社の特徴的な意匠を施しています。単なるスタンプ帳ではなく、神様のお印をいただいているものなので、大切にしてください。

紙製のお守り

お守りは、神様のご神徳を入れてあります。いわば小さな神社です。ぞんざいな扱いをせずに、身に着けていただきたいものです。

ー授与品のどんな点に注目すると楽しめますか。

それぞれの神社で授与品に創意工夫をされています。その神社の由緒や伝承をもとにしたデザインが多いので、参拝時に由緒書きなどを確認しておくと、その授与品ができた「理由」がわかると思います。

「縁むすびのひも」「鳥飼のなで牛さん」が人気

「縁むすびのひも」

ー鳥飼八幡宮ならではの授与品の魅力とは?

お守りは錦のお守りが一般的ですが、元々は紙や木で作られていたものです。鳥飼八幡宮では社殿を遷宮した時に原点回帰ということで、紙製のお守りにしました。総じて新しいお守りは評判が良いですが、「病気平癒」「方位除」「厄除」などを受けられる方が特に多いです。

「縁むすびのひも」も人気です。13色のひもを2本1組で受けるのですが、1本は鳥飼八幡宮の御神木に願掛けしながら結び、1本は持ち帰って身近なものに結ぶものです。神様とのご縁を結ぶ鳥飼八幡宮独自の祈願方法です。

「なで牛さま」

境内社の天満宮に「なで牛さま」がおられます。かわいらしい表情と仕草が氏子の方に人気です。自身の調子が悪い部分と同じところをさすると、痛みが楽になるとして評判で、多くの人になでられ、表面がすり減るほど。なで牛さまをモチーフにした「鳥飼のなで牛さん」というお守りも人気です。

秋の風物詩「赤ちゃん土俵入り」

力士に抱かれた赤ちゃんは元気に育つとの伝えが

ー年間を通じて行われる神社行事にはどんなものがありますか。

元始祭、節分祭、建国祭、春季例祭、夏越祭、新嘗祭などの例祭は多くの神社で行われています。季節ごとのお祭り、特別な日を祝うお祭りなどです。それぞれの神社の創建にかかわるお祭りも、その神社の重要な行事として執り行われます。

ー「鳥飼八幡宮」の秋の行事の見どころを教えてください。

秋といえば、九州場所で鳥飼八幡宮を宿舎にしている九重部屋の力士との交流・写真撮影会「赤ちゃん土俵入り」です。今年は11月1日、2日に行います。例年同日に「鳥飼八幡宮秋祭りトリフェス」も開催しています。鳥飼の鳥にちなんだメニューの飲食店などが並びます。子ども縁日もあって赤ちゃん、お子さんが主役のお祭りです。

ー神社によってご利益が違うとされていますが、どうしてでしょうか?

神社によってお祀りされている神様のご神徳が異なるからです。神様のご神徳は、神話や伝承によって定められています。

ー「鳥飼八幡宮」では、どんなご利益があるとされていますか?

八幡大神が主祭神ですので、勝負運、家庭円満、安産、子安、縁むすびなどのご神徳があります。また境内社には武内宿禰さまが祀られ、病気平癒、健康長寿のご神徳も。天之御中主神さまも祀られていますので、凶方位を吉方にする方位除、厄除などのご神徳もあります。

1日・15日、新月・満月にお参りする習慣も

自然と調和した鳥飼八幡宮の境内

ー1日と15日にお参りする習慣にはどんな意味がありますか。

1日は朔日(ついたち)参りとして、古くから行われているお参りです。新しい月を迎えるにあたり、感謝と祈りを新たにする日です。15日のお参りは、半月の間無事に過ごせたことを感謝し、残り半月を無事に過ごせるようお参りします。
和暦では1日が新月、15日が満月ですので、新月や満月の日にお参りされる方も多いです。

ーかしわ手の音が境内に響くときに感じるような神社の“気”や“力”はどういうところから来ているのですか。

神社の“気”や“力”の感じ方は人それぞれですが、ご神徳の源は神様です。その力を響かせるのは、崇敬している参拝者の方です。お参りされた方ご自身によるところも大きいと考えます。

ー現代人が神社に求めるものは変化してきていますか。

日本人のアイデンティティーを感じ、思い出すきっかけとなる場所として神社や神道に関心がある方が増えていきていると実感しています。
ー「鳥飼八幡宮」はどんな役割を担っていきたいですか。

地域の心のよりどころとして、歴史と文化を次代に伝え、人と人、人と自然を結ぶ場であり続けたいと思っています。
また、日本全国、世界から多くの方をお迎えしたいです。交流の場としての役割を担えたらと考えております。

鳥飼八幡宮

住所 福岡市中央区今川2-1-17
電話 092-741-7823

鳥飼八幡宮 公式Webサイト
https://hachimansama.jp/

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