立ち会い出産ってどんなイメージがありますか? 私は無痛分娩で二人の子供を出産し、夫と共にリラックスした雰囲気の中で迎えることができました。でも、同じく無痛分娩で出産した友人Aさんの立ち会い出産は、予想外の展開だったようです。
夫のビデオ撮影が引き起こした波乱

妊娠中の友人Aさんに、無痛分娩のメリットを私が熱く伝えたこともあり、彼女も無痛分娩を選ぶことに決めました。
立ち会い出産を希望し、ビデオカメラでその瞬間を収めたいというAさん夫も乗り気でした。しかし、いざ出産の日を迎えると、夫のビデオカメラが思わぬトラブルを引き起こすことに。
撮影に夢中で、痛みに苦しむAさんを放置

出産日が近づいても、「無痛分娩=完全に痛みから解放された出産」と考えていたAさん。
映像業界で働くAさん夫にも、
「麻酔が効いているから、まったく痛くないみたい。あなた、出産の瞬間も撮りたいんでしょ? 立ち会い出産で撮影しても良いよ」と気軽に許可していました。
そしていよいよ出産の時が訪れました。ビデオカメラ持参で病院を訪れたAさん夫。病室に到着すると、意外なことに痛みにのたうちまわっているAさんの姿が…
「無痛分娩だから、痛くないんじゃなかった?!」
そうです。本来であれば、麻酔が効いてほとんど痛くないはずの無痛分娩ですが、初産の妊婦の場合、麻酔が効いた状態では子宮口が開くのに時間がかかり、お産が遠ざかることがあるそうです。そのため、Aさんは一度麻酔を切って、子宮口が開くまで待つことになりました。
麻酔が切れてしまえば、鈍痛が襲いかかります。完全に痛くないお産だと思っていたのに、まさかの陣痛を味わう羽目になってしまい、心の準備が追いつきません。あまりの痛みに、体中にじっとりと脂汗がにじみ、骨盤はメリメリと割れてしまいそうに痛みます。けれど、妻から撮影許可をもらったAさん夫は、のたうちまわっている姿を見てもカメラを向けて撮影をしています。
いつの間にか姿を消した夫

「ねっねぇ、腰が割れそうに痛いから、このテニスボールを腰に当てて、痛みを和らげるのを手伝って」と、痛みの波が少し遠ざかったタイミングで、Aさんは夫にテニスボールを渡しました。
すぐにでも腰に押し当てて痛みを逃がして欲しいのに、夫は「撮影しながらはムリだよ~」なんて呆れたことを言っています。
「カメラはいいから!」怒気をにじませながらAさんが急かすと、夫は渋々といった様子で、三脚を立ててビデオカメラを固定しはじめました。そして、助産師さんにやり方を教えてもらい、ボールを押し当てはじめましたが、まったく痛みが和らぎません。見当違いの場所ばかりボールを押し当ててくるので、痛みのあまり我を忘れたAさんは、
「もうあんたはいい! ◯◯(助産師)さん、代わってください!」とブチギレました。
ようやく子宮口が開きはじめ、再び麻酔を入れてもらい、痛みが嘘のように消えていった時気づけば夫の姿が病室にありません。いつ分娩室に移動するか分からない状況なのに… と、苛々しながら待っていると夫が満足そうに戻ってきました。
ついには医師の怒りを買い、強制退場へ

「カメラを持って分娩室に入る許可を取ってきたよ!」と、得意げなAさん夫。
依然として撮影に執着する夫。助産師さんから
「妊婦さんの頭側から撮影するように」と指示されていたにも関わらず、赤ちゃんの出産に際して医師が会陰切開の準備を進めている間に、夫は指示を無視して足元に近づこうとしました。
その瞬間、カメラが医師の持っていた器具に当たり、大きな音が鳴り響くハプニング発生。医師から
「危ないじゃないですか! 今すぐ分娩室から出て廊下で待っていてください!」と叱責され、夫は廊下に追い出されることに。結局、出産の感動的な瞬間を映像に収めることはできず、Aさんはひとりでその瞬間を迎えることになりました。
思い通りにならなかった、Aさんの立ち会い出産。出産後、Aさんは「夫がこんなに頼りにならないなんて!」と笑いながら話していました。
(ファンファン福岡公式ライター/mai)


