時々しか映画を見ない私ですが、先日見た「国宝」で少しスイッチが入り、先週も夕食後トコトコ自転車でイオンシネマ大野城まで出かけて行きました。

「でっちあげ」。サブタイトルが「殺人教師と呼ばれた男」、刺激的です。映画が公開されたことを知ってから見たいなあ、と思ってましたが、ようやく実現しました。気がついたら終わってて見逃したこと、何度もありますが、今回はなんとか間に合いました。
なにしろ、福岡市内の小学校で起こった実話をもとにした話ですからね。興味をそそられます。
もう22年前になるんですか。連日テレビや新聞、週刊誌で取り上げられて「ほんとにそんな先生がいるのか」と驚いたのもつい最近のことのようです。

で、書きたいのは綾野剛さんのことですねえ。
そろそろ福岡でも上映が終わりそうですが、あらすじを書くといけないでしょうから、彼の演技にあらたまて感心したことに触れたいと思います。
綾野剛演じる先生・薮下誠一はとんでもなく理不尽な目に遭いながら、気弱な性格ゆえかはっきりと自分の正しさを主張することができません。多くの人であれば、自分にひどい仕打ちをした相手のことを恨んだり、ののしったりすると思うんですが、それもしません。
ずっと耐えて耐えて、そんな状況でも「敵」としか思えない相手のことを思いやるやさしさも見せます。
ほんと見ていて歯がゆくなります。
最後まで見て、あるアメリカ映画のことを思い出しました。
「グラディエーター」です。
自分の地位を脅かすと考えた皇帝の息子から妻子を焼き殺されるなどの仕打ちでいたぶられ続けたラッセル・クロウ演じる主役がずっと理不尽に耐えて耐えて耐え続け、最後に復讐を果たす古代ローマの物語です。
ラッセル・クロウはグラディエーターに限らず、ひたすら不遇や不幸に耐え忍ぶ役柄が最高です。色々作品あり、ぱっと出てきませんが、「ビューティフル・マインド」とかそんな感じだったと思います。
綾野剛さんも「日本のラッセル・クロウ」といっても過言じゃないほどそういう役が似合うと思います。
「地面師たち」の辻本拓海役も、家族を失い心ならずも悪の道に引きずり込まれていく悲しい運命をほんともの哀しく演じてました。
私は元々綾野剛さんという俳優、あんまり好きじゃなかったんです。とくにドラマの「オールド・ルーキー」では、元サッカー選手の熱血パパという役回りがあまりにも似合ってなくて・・・。配役と脚本がいかんやったんでしょうね。
でも、地面師たち見て一気に変わりました。あの哀愁を表現できる同年代の俳優としては彼が抜きんでてるんじゃないでしょうか。
強いていえば、永山瑛太さんでしょうか。
それで思い出しましたが、「でっちあげ」を見ていて、「このシーン、どっかで見たことあるなあ」と思ったんですが、それは是枝裕和監督の「怪物」の中に出てきます。そこで綾野さんと同様の役を演じるのが瑛太さんなんです。ご興味のある方は両方見比べてみると、私の書いてる意味がわかると思います。
綾野剛の哀しみに満ちた演技が見たい人は「ヤクザと家族」という映画もおすすめです。


