明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」正続編終了時に、多くの方から続編を望まれる声をいただきました。御期待に応え第3シリーズをお送りします!

不思議な話を知らないかって?
…不思議な話…かあ。
あ、あるある。
ここに入る前に妙なことに気が付いたんだよ。
うちのアパートから見える踏切…ほら黒崎の工場に遊びに行くときいつも通った踏切、あそこ変なんだよ。

気が付いたのは1年前くらいかな…
あの踏切、夜になると赤いライトが点くじゃん。
それが去年の夏、空気を入れ替えようと窓を開けたら青い電灯が灯っていたんだよ。
その時は「へえ、なにかの条件で色が切り替わるのかな?」くらいにしか思わなかった。
翌日、あの踏切を抜けようとしたら人だかりがしていてね。
聞くと自転車に乗ったお年寄りが電車にはねられたとのことだった。

これはおかしいと確信したのはそのひと月後。
体調が悪かったので、早めに電気を消してベッドで寝ていたら窓の隅が青く光ったんだよ。
窓を開けて見下ろすと踏切の電灯は青くてね。
その明かりに照らされて髪の長い女の人がむこう向きに立っていた。
しばらく見ていたら突然くるっと振り向いてこっちを見上げたんだ。
明らかにボクを見た。
最初からこっちが見ているのが分かっていたように真っ直ぐに。
とても嫌な気持ちがして急いでドアを締めたよ。
部屋まで来るんじゃないかと朝までびくびくしていたよ。

幸い朝まで何もなかったけど、家を出ると踏切に続く道路が渋滞していてね。
軽自動車が列車に接触していたんだ。
「ああ、やっぱり!」と思った。
あの踏切に青い電灯が灯った翌日は何らかの事故があるんだ。

それから窓は開けていないよ。
女がいたら嫌だから。
でもね、可能な限り青い電灯が灯った日付はメモしたんだ。
思った通り100%だったよ。
このメモあげるから、図書館ででも過去の新聞を調べてみて。
この話はこんなとこかな。
今日は来てくれてありがとう。
手術がうまくいったらまた会おう。
【矢牧君の話】

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この連載を初めてから生来の不思議好きに拍車がかかり、いろんな知人・友人に会う度に「不思議な話」や「怖い体験」を聞いて回っているが、これもその中の一つ。今年に入って小学校以来の友人・古芝君から聞いた話である。
心臓の手術のため入院した友人・矢牧君(筆者は会ったことはない)のお見舞いに行った際に古芝君が聞いた話で、図書館の新聞で調べてみたら、もらったメモにあった日付の翌日には必ず事故が起こっていたとのことだった。
それ自体不思議なのだが話し終えた古芝君がぽつりと言った次の言葉がさらに不気味だった。
「でもなぁ変なんだよ。俺たち工場方面に行くときそんな道通ったことないし、なにより矢牧の部屋から線路なんて見えないんだ」


チョコ太郎より
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