毎年、小学校の校庭で開催される夏まつり。規模は小さいながらも、屋台や盆踊りなどで楽しい時間を過ごすことができます。ところが、まつりの終盤に小学1年生の二男が「お財布がない…」と衝撃のひと言。暗く蒸し暑い夏の夜、私は財布探しに奔走することになったのです。
3人連れてワンオペ夏まつりに挑戦
子どもたちが通う小学校では、毎年校庭で夏まつりが開催されます。PTAや地域の方々、子ども会の皆さんが屋台を出し、校庭の中央には櫓(やぐら)が建てられて、盆踊りも行われます。
毎年、夫も一緒に家族5人で出かけるのが恒例なのですが、この年は夫が仕事のため、私ひとりで3人の子どもたちを連れて参加することになりました。
ワンオペで3人の子どもを連れての夏まつり…。正直、楽しみよりも不安の方が大きく、「行かない方がいいのでは」とさえ考えました。
けれど、小学4年生の長男はすでに友達と約束をしており、それを聞いた小学1年生の二男も「行きたい!」と目を輝かせます。2歳の三男が途中でぐずるかもしれないという不安もありましたが、「そうなったら帰ろう」と子どもたちと約束し、小学校へ向かうことにしました。
校庭ではしゃぐ兄弟たち 束の間の“幸せなひととき”

長男と二男にはそれぞれ財布とおこづかいを持たせ、「もし迷子になったら校門で待ち合わせよう」と伝えておきました。
長男はさっそく友達を見つけて別行動。二男もまた、かき氷の屋台にまっしぐら。お金は持たせているものの、1人で注文できるのか、ハラハラしながらその様子を見守ります。私は走り回る三男を追いかけまわしながら、二男の姿を目の端でとらえ続けました。
空が薄暗くなってきた頃、櫓のまわりで盆踊りが始まりました。「ジャンボリミッキー」では、子どもたちが自由に櫓に登ってぴょんぴょんと飛び跳ねます。このときばかりは3兄弟が同じ場所に集まり、楽しそうに踊る姿を見ることができました。
二男の「お財布がない…」から汗だくの大捜索

汗だくになって櫓から降りてきた子どもたちと合流し、「そろそろ帰ろうか」と声をかけました。すると、「最後にもう1回かき氷が食べたい!」と子どもたち。たくさん汗もかいたし、特別に2杯目も買ってもよいと、屋台へ向かいました。
そのとき、ニコニコ笑顔だった二男が、急に真顔になってうつむき始めました。体調が悪いのかと思い「どうしたの?」と声をかけると、二男は小さな声で言いました。
「お財布がない…」
ポケットを確認しても財布はなく、最後に使った記憶も曖昧とのこと。櫓のあたりで落としたのかもしれないと探しに行きましたが、見つかりません。総合受付にも届け出はなく、私たちは暗い校庭の地面を懸命に探すことになりました。
暑さと暗さのなか、三男はだんだんぐずり始めます。私は三男をおんぶしながら、汗だくになりながら目を凝らして財布を探しました。
「ありがとう」があふれた夜に

そこへ、長男の友達たちが集まってきて「どうしたの?」と声を掛けてくれました。二男が財布を落としたことを伝えると、
「みんなで探そう!」と、ひとりの子が声を上げてくれました。
気がつけば、財布探しに協力してくれる4年生が5〜6人に。
「ボクはあっちを見てくる!」
「綿あめを買ったときはあったんだね?」と、二男にやさしく声をかけながら、屋台で買った光る腕輪を地面に向けて懸命に探してくれました。
まつりの終了時間も近づくなか、私たちの様子に気づいた方が一緒に地面を気にかけてくださる姿もありました。
「あったー!」その声を上げたのは、長男の友達でした。
「これでしょ!?」と走って持ってきてくれたのは、まさしく二男の財布。私たち家族は頭を何度も下げて、
「ごめんね、本当にありがとう」と感謝の気持ちを伝えました。しょんぼりしていた二男も「ありがとう!」と、うれしそうに顔を上げます。
「ワンオペで夏まつりは無茶だった」という後悔、人に迷惑をかけてしまったという反省、そして、長男の友達たちからもらった温かさ。たった2時間ほどの出来事でしたが、忘れられない夏まつりとなりました。
(ファンファン福岡公式ライター/本田 すのう)


