【SNSの呪縛】火傷した娘よりインスタを優先する“映え至上主義”の母親

小学校ママ友とのバーベキューで目の当たりにしたのは、思わぬ瞬間に「母親」という役割を手放してしまったママ友Bの姿でした。娘の火傷よりも、“いいね”の数を優先したBさん。その様子は、私に「人として大切なものは何か」を考えさせる出来事でした。

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BBQ開始前から写真大会

写真AC

 その日、公園のBBQ広場に集まった私たちママ友グループ。快晴の空、色とりどりの食材、にぎやかな子どもたち。そのすべてが、Bさんにとって“映える素材”だったのでしょう。

 「ちょっと待って!」と、Bさんはスマホを片手にセッティングを微調整。テーブルクロスの位置を直し、果物を見栄えよく並べ、子どもの帽子まで“インスタ映え”仕様に揃え直す姿に、最初は「さすがだね」と感心していた私たちも、何度も写真のために時間をとられ、準備がはかどらなかったので少し距離を置くようになっていました。

子どもがソーセージを落として火傷

写真AC

 グリルの火がちょうど落ち着き始めたころ、Bさんの娘ちゃんが「わたしが焼く〜!」と元気に声を上げました。ソーセージの串を手に、誇らしげにこちらを振り返るその笑顔は、とても無邪気で眩しかったのを覚えています。

 ところが、次の瞬間
 「きゃっ!」持っていたソーセージが手からするりと落ち、それを拾おうとした娘ちゃんの手が、熱を帯びたグリルの縁に触れてしまったのです。

 「アッッッツ!!!」その叫び声に、私たちは一斉に振り返りました。娘ちゃんはその場にしゃがみ込み、右手を押さえてわっと泣き出しました。私は慌てて駆け寄り、「大丈夫? どこをやけどしたの?」と声をかけながら手を確認。

 赤く腫れた小さな手のひらが、痛みと驚きを物語っていました。「冷やさなきゃ!」と叫ぶ私に、別のママがすぐに保冷剤を渡してくれました。タオルで包み、そっと手に当てると、娘ちゃんは震える声で「いたい…」とこぼしました。

 目には涙をため、母親の姿を探すように、周囲を見まわしていました。そのとき、ふと視線を向けると少し離れたベンチに座るBさんが、スマホを自分に向けて微笑んでいました。

 「#BBQ日和」「#ママ友最高」画面越しの自分に夢中で、髪を整え、カメラの角度を何度も確認するその姿は、まるで“今この瞬間が一番幸せ”であるかのよう。私は言葉を失いました。娘ちゃんは、泣きながら母親をじっと見つめていました。

 助けを求めるその瞳に、Bさんは気づきもせず、気づかないふりをしているようにさえ見えました。
 「もう投稿終わった?  娘ちゃん、火傷しちゃって…」と別のママが声をかけると、Bさんはようやくスマホを下ろし、「えっ、ほんと? まぁ大丈夫でしょ」と軽く笑いました。その瞬間、娘ちゃんの小さな肩がすっと落ちたのを、私は見逃しませんでした。

“いいね”よりも大切なものに気づいて

写真AC

 帰り道、私は娘ちゃんの後ろ姿を見ながら、胸の奥がずっとモヤモヤしていました。娘ちゃんが欲しかったのは「いいね」じゃない。母親の一言、抱きしめてくれる腕、それだけだったのに…。

 Bさんは後日、「あの投稿、過去一バズった!」と嬉しそうに話していました。でもそこに映っていたのは、キラキラした笑顔やきれいに並べられた料理だけで、娘ちゃんの火傷のことなどには何も触れられていませんでした。

 SNSは便利です。でも、画面の向こうの“誰か”ばかりを見て、目の前の“本当に大切な誰か”を見失ってしまっては、本末転倒だと思うのです。あの日以来、私の中で“何を撮るか”より“誰を見ているか”が大事になりました。あのときの娘ちゃんのまなざしが、それを教えてくれたのです。

(ファンファン公式ライター/mie)

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